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ヤマザキマリさん『壁とともに生きる~わたしと「安部公房」』が刊行 戦争とパンデミックの時代に、この知の巨人の声を聞け

ヤマザキマリさん著『壁とともに生きる~わたしと「安部公房」』

ヤマザキマリさん著『壁とともに生きる~わたしと「安部公房」』

漫画家・エッセイストとして活躍するヤマザキマリさんが「心の師」と仰ぐ安部公房についてまとめた珠玉の一冊『壁とともに生きる~わたしと「安部公房」』がNHK出版より刊行されました。

 

自由に生きれば欠乏し、安定すれば窮屈だ。どうしようもなく希望や理想を持っては、様々な“壁”に阻まれる――。そんな私たち人間のジレンマを乗り越えるヒントは、戦後日本のカオスを生きた作家・安部公房にある!

漫画家・エッセイストとして活動するかたわら、テレビ・ラジオなどでも多彩な才能を発揮しているヤマザキマリさん。そんなヤマザキさんが「心の師」と仰ぐ人物が、芥川賞作家であり、劇作家、演出家としても世界にその名を知られた安部公房です。

本書『壁とともに生きる ~わたしと「安部公房」』は、ヤマザキさんが最も敬愛する作家・安部公房について、彼の作品に触れながら一冊の本にまとめたものです。

(c)Opale/アフロ

(c)Opale/アフロ

<プロローグより抜粋>

~十代の後半、私は留学先のイタリアで安部公房の作品に出会って以来、小説から論評・エッセイ、戯曲にいたる彼の文学を、私は貪るように読んで傾倒してきた。もしあの頃、安部公房の文学に出会っていなかったら、私は今とは違う考え方や生き方をしていたかもしれない。

~私たちは今、パンデミックと戦争というまさに百年前に近い不穏な世界情勢の只中に生きている。だからこそ第二次世界大戦後の混乱のなかで、あらゆる予定調和の崩壊、そしてあらゆる不条理と対峙しつつも、表現という手段を武器に毅然として生き延びてきた安部公房という作家の作品は強い説得力を持つ。彼の作品を軸に思索することで、今の時代を乗り越えるためのあらゆる示唆を感受できるのではないかと思う。

 
漫画家・ヤマザキマリさんに深い影響を与え、先の見えない現代にこそその先見性が煌めく作家の「観察の思考」を、著者の視点と体験から生き生きと描いた一冊です。

※なお、NHKEテレ「100分de名著」2022年6月放送予定「安部公房 砂の女」にヤマザキマリさんの講師出演が決定しています。

 

本書の構成

プロローグ 壁とともに生きる

第一章 「自由」の壁……『砂の女』

第二章 「世間」の壁……『壁』

第三章 「革命」の壁……『飢餓同盟』

第四章 「生存」の壁……『けものたちは故郷をめざす』

第五章 「他人」の壁……『他人の顔』

第六章 「国家」の壁……『方舟さくら丸』

 

著者プロフィール

著者のヤマザキマリさんは、漫画家・エッセイスト。1967年生まれ。17歳のときに渡伊、国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で油絵と美術史を専攻。エジプト、シリア、ポルトガル、米国を経て各地で活動したのち、現在はイタリアと日本を拠点に置く。

1997年より漫画家として活動開始、2010年『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。主な漫画作品に『スティーブ・ジョブズ』(講談社)、『プリニウス』(とり・みきさんとの共作/新潮社)など。エッセイに『ヴィオラ母さん――私を育てた破天荒な母・リョウコ』(文藝春秋)のほか、『国境のない生き方――私をつくった本と旅』(小学館新書)、『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)など多数。2022年5月、安部公房の作品論『壁とともに生きる――わたしと「安部公房」』(NHK出版新書)を刊行。2015年度芸術選奨新人賞受賞、2017年、日本の漫画家として初めてイタリア共和国星勲章・コメンダトーレを受章。東京造形大学客員教授。

 

壁とともに生きる: わたしと「安部公房」 (NHK出版新書)
ヤマザキマリ (著)

不自由で理不尽な社会で、心涼やかに生きるには?

自由に生きれば欠乏し、安定すれば窮屈だ。どうしようもなく希望や理想を持っては、様々な”壁”に阻まれる――。そんな私たち人間のジレンマを乗り越えるヒントは、戦後日本のカオスを生きた作家・安部公房にある!「マンガ家・ヤマザキマリ」に深い影響を与え、先の見えない現代にこそその先見性が煌めく作家の「観察の思考」を、著者の視点と体験から生き生きと描き出す!

 


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