芥川賞作家・翻訳家の小野正嗣さんが現代の世界文学から選りすぐりの16作品を紹介!『歓待する文学』刊行 悲しいとき、弱ったとき、あなたに寄り添い、あなたを迎え入れてくれる作品がここにある!
芥川賞作家・翻訳家にして、名うての読み手である小野正嗣さんが、現代の世界文学から選りすぐりの16作品を紹介する『歓待する文学』が、NHK出版より刊行されました。
カズオ・イシグロさん、多和田葉子さん、小川洋子さん、クッツェーさん、ゼーバルトさん、マリー・ンディアイさん、村田沙耶香さん、アキール・シャルマさんなどをセレクト。読書案内の枠を超え、小野文学として昇華した一冊です。
著者・小野正嗣さんによる本書「はじめに」より
「本を読んでいて、次のような感覚を覚えたことはありませんかーーまるで自分に読まれるのをずっと待っていたかのようだ。まるで自分に向けて、自分のために書かれているかのようだ。
いや、そうはっきりと言葉にする必要もないほど、本を夢中になって読みふけり、その世界に没入していたのかもしれません。
いずれにせよ、そんなとき本はあなたを受け入れています。言葉でできたその世界のうちに、あなたのための場所を作り、あなたをもてなしている。
そうです。あなたを歓待しています。
これからみなさんと一緒に本を読んでいきます。
多くは僕自身を歓待してくれた小説作品です。
作品の読み方はいたってシンプルです。毎回僕が試みるのは、目の前にある作品をただ読む、それだけです。ときどきどうしても必要だと思われたときには、同じ作家の別の作品や発言にも触れていますが最小限にとどめています。個々の作品との出会いが何よりも大切だと考えているからです。(中略)
要するに、僕がやりたかったのは、着の身着のままでふらっと訪れた旅人、つまり僕を、それぞれの作品がどのように歓待してくれたのかを語るということだったのです」
本書では、私たちがよく知る、日本の作家から、あまりなじみのないフランス語圏の作家、韓国、中国、インド、アフリカ出身の作家まで、世界で活躍する現代の文学作品を取り上げます。
本書のもとになっているのは、NHKラジオ「こころをよむ 歓待する文学」(2019年1月~3月)のテキストです。そこへ大幅に加筆・修正を加え、新たに3作品について書き下ろしています。
著者・小野正嗣さんによる特別朗読音声を公開
書籍発売に合わせ、著者・小野正嗣さんによる本書15回の作品解説を、朗読として期間限定公開中です。
取り上げる作品は、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』です。芥川賞受賞作品としても知られる当作の読み解きを、全4回で順次公開します(※NHK出版公式Youtube、NHK出版公式Facebook、NHK出版「本がひらく」でも、順次公開予定)。
★著者からの音声メッセージと公開URLはこちら:https://nhktext.jp/kantai
本書の目次
1 文学は歓待する
2 追憶の悲しみ ~W・G・ゼーバルト『移民たち』
3 外国語で祈ることはできるのか ~イーユン・リー「千年の祈り」
4 言葉はケアする ~アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』
5 言葉の外に耳を澄ます ~小川洋子『ことり』
6 絶対的な孤独としての一本の木 ~ハン・ガン『菜食主義者』
7 “こんなふうにしても人は生きていける” ~J・M・クッツェー『マイケル・K』
8 信頼できる作家による信頼できない語り手 ~カズオ・イシグロ『浮世の画家』
9 文学は獣も人も自由にする ~多和田葉子『雪の練習生』
10 翻訳は母語の可動域を広げる ~村上春樹『職業としての小説家』
11 鳥たちはどこで翼を休めるのか ~マリー・ンディアイ『三人の逞しい女』
12 故郷と異郷のあいだに架かる橋 ~マリリン・ロビンソン『ハウスキーピング』
13 悲しみと喜びをむすぶ
14 愛情と配慮の流れが淀むとき ~レイラ・スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』
15 「わたし」は「わたし」のものなのか? ~村田沙耶香『コンビニ人間』
16 心の余白、風景の余白 ~瀬尾夏美『あわいゆくころ』
著者プロフィール
著者の小野正嗣(おの・まさつぐ)さんは、1970年生まれ。大分県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。パリ第8大学文学博士。早稲田大学文化構想学部教授。
『九年前の祈り』(2014)で芥川賞を受賞。『踏み跡にたたずんで』『にぎやかな湾に背負われた船』ほか著書多数。主な訳書に、マリー・ンディアイ『ロジー・カルプ』『三人の逞しい女』、アミン・マアルーフ『アイデンティティが人を殺す』など。2018年からNHK「日曜美術館」のキャスターを務めている。
歓待する文学 小野 正嗣 (著) あなたに寄り添い、あなたを迎え入れる世界文学16選 |
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