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「過剰な制裁が、新たな戦争を生み出す」ケインズ『平和の経済的帰結』が山形浩生さんの新訳で復活!

東洋経済新報社は、20世紀最高の経済学者であるジョン・メイナード・ケインズの著書『平和の経済的帰結』(1919年)を、山形浩生さんの新訳で刊行しました。

 

100年経っても色あせない、国際経済の分析から描く「平和と戦争の連鎖」

ケインズは、第一次世界大戦が終戦してまもなく、イギリスの代表団としてパリ講和会議に参加します。しかし、敗戦国ドイツへの過剰な制裁を課す議論の方向性と、まとまりそうなヴェルサイユ条約のあまりのひどさに絶望し、辞表をたたきつけて、即座に本書を書き上げました。

 
ケインズが描く国際経済の分析は、その後の「ナチスの台頭」や「第二次世界大戦開戦」をも預言しました。そのため本書は、第一次世界大戦にとどまらず、第二次世界大戦の戦後処理とその後の世界経済アーキテクチャ構築の発端となった本でもあります。

 

編集者コメント

「ロンドンの住民は、ベッドの中で朝の紅茶をすすりながら、電話1本で世界中の各種産物を、いくらでも欲しいだけ注文できたし、その注文品はほぼ確実に、ほどなく自分の玄関にまで配達された。同時にそれと同じ手段によって、世界のどんな地域にある天然資源や新事業にでも、自分の資産を投資できたし、その将来的な果実や利得の分け前も、何の努力も手間もかけずに手に入った」

 
本書に出てくるこの文章は、第一世界大戦開戦直前(1914年)の描写です。「電話1本」を「1クリック」に変えれば、まるで現代の描写かのようです。

ケインズは本書にて、そうした戦前の国際経済がどのような要因によって支えられていたかを描写した上で、戦後の国際経済のあり方を論じています。

 
今の生活は決して永続的なものではない。そうした前提に立って本書を読むと、戦争が身近になりつつある現代でも、役立つ知見にあふれた本だと考えています。

 

本書の構成

序文

第1章 序論

第2章 戦争前のヨーロッパ

第3章 会議

第4章 条約

第5章 賠償

第6章 条約後のヨーロッパ

第7章 修正案

訳者解説

 

著者プロフィール

 
■著者:ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)

1883年生まれ、イギリス出身。1905年ケンブリッジ大学キングズカレッジ卒業。マクロ経済学の基礎を確立した、20世紀を代表する経済学者。1946年没。

著書に『雇用・利子および貨幣の一般理論』『貨幣論』『貨幣改革論』など。

 
■訳・解説:山形浩生(やまがた・ひろお)さん

評論家、翻訳家。東京大学大学院工学系研究科都市工学科およびマサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。

著書に『新教養主義宣言』ほか。訳書に『超訳 ケインズ「一般理論」』、ピケティ『21世紀の資本』、クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』ほか多数。またネット上でケインズなどの著作の多くを翻訳公開。

 

新訳 平和の経済的帰結
ジョン・メイナード・ケインズ (著), 山形 浩生 (翻訳, 解説)

今こそ読みたい、平和のための経済論

「過剰な制裁が、新たな戦争を生み出す」
100年前、憎悪へ突き進む世界に警鐘を鳴らした
20世紀最高の経済学者・ケインズの傑作が復活!

山形浩生氏「ずいぶんきな臭い時代になってきた現在、本書をきっかけに少しでも戦争/平和と経済についてまじめに考えてくださる方が増えてくれることを祈りたい」ーー「訳者解説」より

〈本書の背景〉
1919年、経済学者にして官僚でもあるジョン・メイナード・ケインズは、第一次世界大戦後のパリ講和会議にイギリス代表団の一員として参加した。
しかし、ドイツへの過剰な制裁を課す議論の方向性とヴェルサイユ条約の、あまりのひどさに絶望し、辞表をたたきつけて、即座に本書を書き上げた。

〈なぜ今、読むべきなのか〉
世界的なベストセラーとなり、ケインズの名を一躍押し上げた本作は、「ナチスの台頭」「第二次世界大戦開戦」を予言した書としても知られる。

戦後処理と世界経済の枠組み構築を考える際のバイブルとも言える本書は、戦争の時代に足を踏み入れている現代においても、主張が色あせない一冊である。

 


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