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夜が訪れ、猫はふわりと現れる――藤田嗣治×エリザベス・コーツワース『夜と猫』が73年ぶりに復刊

美術書や芸術書の出版を手掛ける求龍堂は、藤田嗣治の挿絵による希少本『Night and the Cat』を『夜と猫』として、73年ぶりに復刊しました。美術関係者の間でも入手が難しいとされ、幻の名著と呼ばれた本書は、日本で初出版になります。

 

ニューベリー賞を受賞した児童文学者・詩人と世界的画家によるクリエイティブの結晶

夜のとばりが降りるように、ふわりと現れる猫たちが導く深淵な秘密の世界を、児童文学者で詩人のエリザベス・コーツワースと画家・藤田嗣治の二人が、美しい34の詩と12点の絵により、夢のような一冊にしました。

 
人の暮らしに溶け込みながらも、謎めく猫の気高さと親密な様子が、コーツワースの思慮深く温かい詩と、藤田嗣治による洗練された線描によって、見事に浮かび上がります。 

 

藤田嗣治が日本からフランスへ戻る道中に生まれた、奇蹟の絵本

第二次大戦後、藤田嗣治(1886~1968年)は自由な創作活動を求めて、1949年に日本を発ち、NY経由で翌年フランスに戻りましたが、この時期の1950年に、『Night and the Cat』はNY(マクミラン社Macmillan)で出版されました。十数点の猫たちの吸い寄せられるように美しい素描群は、大晦日とお正月のわずか2日間で描き下ろされました。

本書との出会いは、長年、美術館学芸員として藤田嗣治の展覧会も担当した矢内みどりさんが、藤田の猫の絵に惹かれ原書を入手したことから始まりました。

矢内さんは藤田の絵と見事に調和したコーツワースの詩に魅了され日本へ伝えたいと願い、求龍堂の担当編集者に相談したところ、ぜひ日本語で読んでもらえるようにし、70年以上経て長く絶版となっていたこの名著を創業100年に蘇らせようと、出版に向け走り出しました。

 
<編集者より>

出版当初、本書には、「この叙情詩は、お日様のような暖かさの野イチゴの呼吸のように、読者の意識に落とし込まれる。田園生活を知り、愛して、そのリズムと美しさを確実に表現できるただ一人のひとだ。」(キャロル・M. リチー、『ボストントラベラー』)という賛辞が寄せられたそうです。いかに人々へ深い幸福感を与えたかが感じ取れます。温かで美しいコーツワースの詩を、ぜひ声にも出して読んでいただきたいです。

 

本書の目次

夜会
猫はどこにいるの
母と娘
日曜日
隠遁者
平穏なヤカン
ある雪の夜に
炉端の子猫

暗闇の詩
田舎の庭
田舎の猫
猫とオーロラ
夜の足跡
風と雨
自動車と猫
黄色い猫
道連れ
子猫
ある若い猫の肖像
開いた扉
ロックアウト
子猫たちが遊ぶ時

おまえがしたいように
単純な方式
クリスマス・イブ
白鳥の綿毛(スワンズダウン)、という名の子猫
四月の夜の嵐
島の猫
まぼろし
男と子猫
亡命者
猫を呼び込む

おわりに/矢内みどり
エリザベス・コーツワースについて/矢内みどり 編
藤田嗣治について/矢内みどり 編

 

著者プロフィール

 
■エリザベス・コーツワース

詩人・児童文学者。1893年アメリカ合衆国のニューヨーク州、バッファローに生まれる。1915年、バッサー大学卒業。
1916年コロンビア大学文学修士。卒業後、日本をはじめアジアへ旅をする。旅の経験に影響を受け、『極楽にいった猫 The Cat Who Went to Heaven』(1930年)を発表し、1931年に最古の児童文学賞ニューベリー賞を受賞。詩作とともに数多くの児童文学作品を生みだした。
1986年、93歳の生涯を閉じた。

 
■藤田嗣治(ふじた・つぐはる)

1886年、東京に生まれる。1913年フランスに渡り、ピカソらとも交流。油彩ながら日本画のような繊細な線描を取り入れる。
1914年に勃発した第一次世界大戦中から後もフランスに留まり、画家としての実績を築く。第二次世界大戦時下の戦争画制作についての戦犯の疑いは晴れる。
1949年、アメリカ経由でフランスへ戻る前のNY滞在中、本書のために挿絵を描く。フランスに戻った藤田は1955年にフランスに帰化する。その後世界的な画家として頂点を極めるが、1961年に郊外の田舎家へ移り住む。
1968年、81歳で病没。自身が手掛けたランスの礼拝堂に君代夫人と眠る。

 
■矢内みどり(やない・みどり)さん

美術史家。東京に生まれる。慶應義塾大学で美学美術史学を専攻し卒業。
その後、同学でフランス文学専攻卒業。卒論は「日本人の美意識と桜」「ユイスマンスの『さかしま』とギュスターヴ・モローのサロメ像」。
目黒区美術館で約30年間学芸員として、藤田の挿画本の初の集大成である「レオナール・フジタ絵と言葉展」(1988年)、「高野三三男アールデコのパリとモダン東京」展(1997年)、「山名文夫 永遠の女性像・装いの美学」展(1998年)など、他多数の企画・実施。
著書に『藤田嗣治とは誰か』(2015年、求龍堂)、共著に『日本の近代美術8―日本からパリ・ニューヨークへ』(1993年、大月書店)、『日本の近代デザイン史』(2006年、美学出版)など。
趣味は茶の湯、活け花。

 

夜と猫
エリザベス・コーツワース (著), 藤田嗣治 (著), 矢内みどり (著)

夜が訪れ、猫はふわりと現れる。

73年前のこと、戦後日本からフランスへ戻る旅の途中、NYで過ごした藤田嗣治は、児童文学者で詩人のエリザベス・コーツワースと、二人で夢のような絵本を作った。
幻の名作、日本初出版。

今から73年前、画家・藤田嗣治は第二次世界大戦後の1949年に日本を離れ、NY経由で翌年フランスへ戻る旅に出た。このNY滞在中に、藤田は詩人で小説家のエリザベス・コーツワースの猫にまつわる詩に絵を提供する。
大晦日とお正月のわずか2日間で描き下ろされた十数点の猫たちの吸い寄せられるように美しい素描群は、コーツワースの詩とともに一冊の絵本となった。
出版当初、本書には、「この叙情詩は、お日様のような暖かさの野イチゴの呼吸のように、読者の意識に落とし込まれる。田園生活を知り、愛して、そのリズムと美しさを確実に表現できるただ一人のひとだ。」(キャロル・M. リチー、ボストントラベラー)という賛辞が寄せられた。
いかに人々へ深い幸福感を与えたかが感じ取れる。藤田とコーツワースをつなぐ「猫」の神秘と謎、温かさ。猫を深く愛した二人の創造者が生んだ幻の名著が、70年の時を超えて現代に甦る。
すべての猫を愛する、詩を愛する、藤田嗣治の作品を愛する人々へ贈る。

 


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