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【第54回大宅壮一ノンフィクション賞】伊澤理江さん『黒い海 船は突然、深海へ消えた』が受賞

日本文学振興会は5月18日、第54回大宅壮一ノンフィクション賞(大宅賞)の受賞作を発表しました。

 

第54回大宅壮一ノンフィクション賞が決定!

第54回大宅壮一ノンフィクション賞の選考委員会が5月17日に開催され、次の通り受賞作が決定しました。

 
<第54回大宅壮一ノンフィクション賞 受賞作品

伊澤理江(いざわ・りえ)さん
『黒い海 船は突然、深海へ消えた』(講談社)

 
受賞者の伊澤理江さんは、1979年生まれ。英国ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。英国の新聞社、PR会社などを経て、フリージャーナリストに。調査報道グループ「フロントラインプレス」所属。これまでに「20年前の『想定外』 東海村JCO臨界事故の教訓は生かされたのか」「連載・子育て困難社会 母親たちの現実」をYahoo!ニュース特集で発表するなど、主にウエブメディアでルポやノンフィクションを執筆。東京都市大学メディア情報学部「メディアの最前線」、東洋大学経営学部「ソーシャルビジネス実習講義」等で教壇にも立ち、TOKYO FMの調査報道番組「TOKYO SLOW NEWS」の企画も担当。本編が初の単著。

 
選考委員は、梯久美子さん、後藤正治さん、佐藤優さん、出口治明さん、森健さん。

 
また、今回の候補作は以下の5作品でした。

【第54回大宅壮一ノンフィクション賞候補作】
◎伊澤理江さん『黒い海 船は突然、深海へ消えた』(講談社)
◎石川陽一さん『いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』(文藝春秋)
◎鈴木エイトさん『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)
◎平井美帆さん『ソ連兵へ差し出された娘たち』(集英社)

 

大宅壮一ノンフィクション賞について

大宅壮一ノンフィクション賞は、ジャーナリスト・大宅壮一さん(明治33年~昭和45年)の業績を記念して1970年に創設。各年の優れたノンフィクション作品を表彰する文学賞です。

公益財団法人日本文学振興会が主催し、株式会社文藝春秋が運営。前年1月1日から12月31日までに発表された、個人の筆者(共著を含む)によるルポルタージュ・内幕もの・旅行記・伝記・戦記・ドキュメンタリー等のノンフィクション作品全般を対象とします。

なお、同賞は2017年より「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞」に名称を変更して開催されていましたが、2019年より名称を元の「大宅壮一ノンフィクション賞」に戻しています。

 

黒い海 船は突然、深海へ消えた
伊澤 理江 (著)

その船は突然、深海へ消えた。
沈みようがない状況で――。

本書は実話であり、同時にミステリーでもある。

2008年、太平洋上で碇泊中の中型漁船が突如として沈没、17名もの犠牲者を出した。
波は高かったものの、さほど荒れていたわけでもなく、碇泊にもっとも適したパラアンカーを使っていた。
なにより、事故の寸前まで漁船員たちに危機感はなく、彼らは束の間の休息を楽しんでいた。
周辺には僚船が複数いたにもかかわらず、この船――第58寿和丸――だけが転覆し、沈んだのだった。

生存者の証言によれば、
船から投げ出された彼らは、船から流出したと思われる油まみれの海を無我夢中で泳ぎ、九死に一生を得た。
ところが、事故から3年もたって公表された調査報告書では、船から漏れ出たとされる油はごく少量とされ、船員の杜撰な管理と当日偶然に発生した「大波」とによって船は転覆・沈没したと決めつけられたのだった。
「二度の衝撃を感じた」という生存者たちの証言も考慮されることはなく、5000メートル以上の深海に沈んだ船の調査も早々に実現への道が閉ざされた。
こうして、真相究明を求める残された関係者の期待も空しく、事件は「未解決」のまま時が流れた。

なぜ、沈みようがない状況下で悲劇は起こったのか。
調査報告書はなぜ、生存者の声を無視した形で公表されたのか。

ふとしたことから、この忘れ去られた事件について知った、一人のジャーナリストが、ゆっくり時間をかけて調べていくうちに、「点」と「点」が、少しずつつながっていく。
そして、事件の全体像が少しずつ明らかになっていく。

彼女が描く「驚愕の真相」とは、はたして・・・・・・。

 
【関連】
大宅壮一ノンフィクション賞|日本文学振興会

 


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