正解はないし、結論もない…でもきっと、考えたほうがいい――『哲学のメガネで世界を見ると』が刊行
簡単に答えの出ない問いに向き合っていかざるを得ない、今の時代の子どもたちに身に着けてもらいたい「考え方の型」を分かりやすく解説する『哲学のメガネで世界を見ると』(監修:河野哲也さん、文・構成:菅原嘉子さん、絵・漫画:ながしまひろみさん)がポプラ社より刊行されました。
なぜ今「哲学」なのか?
様々な価値観があふれ、変化の激しいこの時代。
子どもたちに幸せに生きていってほしいというのは誰しもが願うことだと思いますが、そのために必要となる力、子どもたちに身につけてほしい力も、大きく変化しています。
大きな流れとして感じるのは、「勉強ができる・頭のいい子」である以上に、 “考える力があること”、“自分で選択できること”、“流されない強さ”などの「生きていく力」を養うことが重要視されているということ。
そして、その「生きていく力」「生き抜く力」に一番必要なことこそ、“哲学”ではないでしょうか。
ここでいう“哲学”とは、過去の哲学者の考えたことを知識として知っている、ということではありません。“哲学”というのは本来、人が生きるなかで出会ういろいろな疑問や“もやもや”を、ゆっくりじっくり考える活動のことをいうのです。
本書では、「こども哲学」の第一人者である立教大学教授の河野哲也さんの監修のもと、子ども同士が、また子どもと大人が語り合いながら考えを深めていく「哲学対話」のエッセンスを、一人でも体験できるように本の形に落とし込んでいます。
“哲学”的な考え方を身につけるということは、自分の頭で考えられること、人の考えにも思いを馳せられること、そうして自分の考えや、自分の今いる位置を俯瞰して捉えることができること、につながっていきます。
それは取りも直さず「視野が広がる」ということであり、自分自身の生きやすさに繋がるのはもちろん、他者への想像力を育み、自分の周囲の人の生きやすさにもつながっていくはずです。
それこそまさに、正解も結論もないような疑問や“もやもや”に直面していかざるを得ない、今の時代の子どもたちに、手渡してあげたい力ではないでしょうか。
読みやすい“漫画”で1つの問いを少しずつかみ砕く
漫画のストーリーを追っていくだけで、主人公と一緒に「キミは学校に行きたい?」という1つの問いを、少しずつかみ砕いて、深く考えられるようになっています。優しいタッチの漫画とイラストで、読書が苦手なお子様でも読みやすい仕様です。
「自分自身はどうか」を、ワークを通して考られる
漫画の間にはさまれたワークでは、疑問に思ったことをどうやって考えていけばよいのか、その「考え方」のポイントを、順を追って解説しています。ここでは、読者の子どもたちが、自分のことを自分自身で考える体験もすることができます。
すぐに役立つ「考え方のノウハウ」がたくさん!
漫画やワークを通して、すぐに使えて一生役立つ「考え方のノウハウ」をたくさん紹介しています。自分の考えを深めることはもちろん、自分の考えを伝えたり、相手の考え方を尊重するためのヒントも。
<例えば…>
◆ハテナのメガネで見てみよう
「なんで?のメガネ」「もしものメガネ」「そもそものメガネ」などのメガネをかけて、「なんで?」「もし○○だったら?」「そもそも○○って?」などと問いかけてみることで、考えを深めていこう!
◆鏡に向かって問いかけよう
考えを深めていくためには、「どうしてそう考えたのか?」を考えることが重要。頭の中で自分に問いかけるのが難しいときは、鏡にうつる自分に向かって問いかけてみると、自分の本当の気持ちに近づくことができるよ。
◆ちがう意見も受け止めよう
自分とはちがう意見というものは、生きていれば必ず出会うもの。そんな時にすべきなのは、相手を論破することではなく、相手が「どうしてそんなことを言っているのか」を知ろうとすること。ここでも「ハテナのメガネ」が役に立つよ!
監修者のことば(本文より一部抜粋)
「こども哲学」とは、子どものために、子どもとともに行う対話型の哲学のことです。哲学といっても、過去の哲学者の考えを知っている必要はありません。身近なテーマでも、ほりさげて、ふだんは考えないで流してしまっているところまで、しっかり考えてみようとする活動です。
「ほりさげて」「しっかり考える」。なんだかむずかしく思われるかもしれませんが、みんなで話しあいながら考えると、自然とそれができるものなのです。みんなが、自分が思ったことをすなおに話して、それにほかの人が質問して、みんなでう?んとじっくり考えてみる。
この本では、そうした対話を行うための流れを、絵とセリフで表現しています。
この本を読 んでいくと、自然に、自分の問いを自分で深めて考えていく習慣をつけることができるようになります。この本では、学校についての問いをじっくり考えたけれど、あなたはあなたで、自分自身の問いを、この本の流れにそって(まったく同じ順序でなくてもいいのです)考えてみましょう。
この本を読んで、ゆたかに考えて、ゆたかな人間関係を築けるようになってほしいと思います。
著者プロフィール
■監修:河野哲也(こうの・てつや)さん
立教大学文学部教授、NPO法人こども哲学おとな哲学アーダコーダ副代表理事。慶應義塾大学文学研究科後期博士課程修了、博士(哲学)。専門は哲嘉子学、倫理学、教育哲学。著書に 『じぶんで考えじぶんで話せる こどもを育てる哲学レッスン 』『「こども哲学」で対話力と思考力を育てる』(河出書房新社)ほか。
■文・構成:菅原嘉子(すがはら・よしこ)さん
ライター・編集者。児童書、実用書などを中心に、企画・取材から構成・執筆まで、本づくりに関わる作業をマルチにこなす。近刊に『いつか選挙に行くキミに知っておいてほしいこと』全3巻(学研プラスほか)
■絵・漫画:ながしまひろみさん
北海道出身。漫画家、イラストレーター。著書に漫画『やさしく、つよく、おもしろく。』(ほぼ日ブックス)、絵本『そらいろのてがみ』(岩崎書店)、『鬼の子』全2巻(小学館)、絵本『そらいろのてがみ』(岩崎書店)ほか。
まんがで哲学 哲学のメガネで世界を見ると 河野 哲也 (監修), 菅原 嘉子 (著), ながしま ひろみ (イラスト) 1つの疑問を深~く考えることで、考え方の“型”を身につけよう!「哲学する」とは、目の前にある考えや疑問について、ゆっくりじっくり考え、他人とも対話しながら、より納得できる考えをさがしていくこと。 本書では、「なんとなく学校に行きたくない…」という主人公のもやもやした気持ちを出発点に、その気持ちを深く掘り下げ、さまざまな人の意見を聞き、友人たちと議論して考えを深めていく過程を、ストーリー(漫画)とワークを通して体験できます。 いろいろな「もやもや」を抱えたときに応用できる、哲学的な思考の“型”を、楽しみながら知ることができる1冊です。 ~あらすじ~ 「なんとなく学校に行きたくないなあ…」と思いながら通学路を歩いていた主人公は、気がつくとふしぎな森に迷い込んでいました。そこで出会ったフクロウに導かれ、森に住む動物たちと様々な意見を交わしながら、「なんとなく学校に行きたくない」気持ちを、少しずつ少しずつかみ砕いていきます。森を抜けたとき、いつもの通学路は、主人公にとって一体どのように見えるのでしょうか? |
◆「あるところにヒツジ飼いの兄妹がいました。ただし、妹は狼人間でした」Miyako Miiyaさん『ヒツジ飼いの兄妹』第1巻が刊行 | 本のページ
◆哲学の泰斗が集結したシリーズ「哲学史入門」が創刊 第1巻は千葉雅也さん、納富信留さん、山内志朗さん、伊藤博明さん、斎藤哲也さん | 本のページ
◆【第32回小川未明文学賞】東京都・古都こいとさん「如月さんちの今日のツボ」が大賞を受賞 | 本のページ
◆『世界は贈与でできている』から4年、近内悠太さん『利他・ケア・傷の倫理学』が刊行 | 本のページ