99歳で急逝した瀬戸内寂聴さんの集大成となる『瀬戸内寂聴全集』第二期(全5巻)が刊行
新潮社は、99歳で急逝した瀬戸内寂聴さんの集大成となる『瀬戸内寂聴全集』[第二期](全5巻)の刊行をスタートしました。
「自分の作品の全集が刊行されることは、夢のまた夢で、生涯の憧れの頂点」と、著者が最期まで刊行をたのしみに待っていた全集が刊行
35歳で文壇デビュー、51歳で出家得度、75歳で『源氏物語』の現代語訳を完成、そして百寿で大往生を遂げた瀬戸内寂聴さん。彼女にとって、生きることは、書くことでした。
2001年刊行の『瀬戸内寂聴全集』(第一期全20巻)から20年、80歳以降に書かれた小説、随筆、戯曲や句集、連載中だった遺作まで、著者自ら精選した決定版全集が、新潮社より刊行開始となりました。第1弾として1月31日に第21巻を発売、2月28日には第22巻が刊行予定です。
<全集の注目ポイント>
◎横尾忠則さんによる真っ赤な布装、函入の豪華装幀。また各巻口絵に横尾忠則さんの作品「赤のシリーズ」を収録。
◎電子書籍のみで配信された小説「ふしだら」初活字化。
◎歌舞伎脚本、能、狂言、オペラなど戯曲を収録。
◎各巻に著名作家による書き下ろしの「解説」
【推薦コメント】
◆川上弘美さん
寂庵に繁く通っていた知人がいる。寂聴さんの小説は読むの? とある日聞いたら、いいえ、読まないわ、お話を聞くだけでじゅうぶんなの、と言う。一冊だけでも読んでみてと『場所』を送った。数週間後、「驚きました。こういう厳しくて孤独な寂聴さんがいるから、ああいう情に通じたお話ができるのね」という葉書がきた。瀬戸内さんの言葉は、近くにも、遠くにも、届く。
◆平野啓一郎さん
二十三年前に初めてお目に掛かった瀬戸内さんは、『源氏物語』の現代語訳が大ブームを巻き起こし、老大家というより、現役バリバリの小説家という感じだった。そして、その後の八十代、九十代の旺盛な仕事の数々! 圧倒的な全集の続編。
◆田中慎弥さん
瀬戸内さんの小説は大胆で奔放なだけではない。恐れやためらいがある。時に不器用でさえある。だから匂いがある。無味無臭な小賢しい構築ばかりが求められる我々世代の書き手にはない野性が、ギラギラと輝いている。
◆伊藤比呂美さん
仏教に関心を持って日本の古典を読み解いていくと、日本文学はみな仏教文学だと思うようになった。出家ということを考えていくと、それは生きながらの自殺だと思えた。寂聴文学とは、この世を離れると決意して実行した人がたどっていった、仏教文学そのものだと思った。
◆高橋源一郎さん
「いよよ華やぐいのちなりけり」は、岡本かの子の晩年の傑作『老妓抄』に出てくる、老いてなお噴き出んとする主人公のいのちの輝きを歌った、有名な一節だ。寂聴さんは、この岡本かの子を描き、この歌からタイトルを得た別の作品も書いている。いまとなっては、そして、この全集におさめられた、著者八十代を過ぎての作品を一望してみるなら、一読者として、ただこの言葉を呟くのみである。
著者コメント
【読者のみなさまへ】
今から二十年前、『瀬戸内寂聴全集 全二十巻』が新潮社から刊行されました。私が七十九歳の時でした。およそ物書きを「なりわい」とする者にとって、自分の作品の全集が刊行されることは、夢のまた夢で、生涯の憧れの頂点でしょう。
真赤な装幀の抱えきれない全集を抱きしめた時、私は「ああ、死んでもいい」と思ったでしょうか。死んでなるものか、このつづきを書きあげるまでは! と、胸がふるえたのです。
私にとっては、生きることはひたすら書くことにつきます。今、数えを百歳になった私は、前の全集のつづきの作品をまとめ、全巻を前に、ああ、もう死んでもいいとため息をついています。
私の作品をご愛読下さった皆々様に、どうか、この全集も、ひきつづきご愛読下さいますよう、伏してお願い申し上げます。
二〇二一年十一月 瀬戸内寂聴
『瀬戸内寂聴全集』[第二期]概要
瀬戸内寂聴さん80歳以降に書かれた小説、随筆、戯曲や句集、最期まで連載していた作品まで自ら精選した決定版全集。
21巻は世阿弥の晩年を描く伝記小説『秘花』、九十歳の清少納言が無常を語る『月の輪草子』、二人の女性の愛と性を描いた『爛(らん)』と晩年の代表作となった長篇三作を収録した。
[第二期]のラインナップ
■第二十一巻 小説・長篇
秘花
月の輪草子
爛
解説・川上弘美
■第二十二巻 随筆
奇縁まんだら
『奇縁まんだら』
『奇縁まんだら 続』
『奇縁まんだら 続の二』
『奇縁まんだら 終り』 全四巻収録
解説・平野啓一郎
■第二十三巻 小説・短篇
藤壺
風景 第三十九回泉鏡花文学賞
わかれ
求愛
ふしだら 電子書籍小説 初活字化
解説・田中慎弥
■第二十四巻 戯曲、句集、追悼文
歌舞伎脚本
「源氏物語 須磨の巻・明石の巻・京の巻」
「源氏物語 藤壺の巻・葵・六条御息所の巻・朧月夜の巻」
能「夢浮橋」「蛇」
狂言「居眠り大黒」「木賊」
オペラ「愛怨」
人形浄瑠璃「モラエス恋遍路」
句集ひとり 第六回星野立子賞、第十一回桂信子賞
追悼文・弔辞(一九九五年~二〇一九年)
解説・伊藤比呂美
■第二十五巻 近著、新作
死に支度
いのち
あこがれ
著作目録・年譜・アルバム
解説・高橋源一郎
著者プロフィール
瀬戸内寂聴さんは、1922年生まれ。徳島県出身。東京女子大学卒業。1957(昭和32)年「女子大生・曲愛玲(チュイアイリン)」で新潮社同人雑誌賞を受賞。
1961年『田村俊子』で田村俊子賞、1963年『夏の終り』で女流文学賞を受賞。1973年11月14日平泉中尊寺で得度。法名寂聴(旧名晴美)。1992(平成4)年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、1996年『白道』で芸術選奨、2001年『場所』で野間文芸賞、2011年に『風景』で泉鏡花文学賞を受賞。2006年、文化勲章を受章。2021年11月9日逝去。
著書に『比叡』『かの子撩乱』『美は乱調にあり』『青鞜』『現代語訳源氏物語』『秘花』『爛』『わかれ』『いのち』など多数。2002年『瀬戸内寂聴全集』(第一期、全二十巻)が完結。
瀬戸内寂聴全集 第二十一巻 瀬戸内 寂聴 (著) 百寿で大往生を遂げた著者の決定版全集(第二期全五巻)ついに刊行開始。二〇〇一年刊行の全集(第一期全二十巻)から二十年、著者八十歳以降に書かれた小説、随筆、戯曲や句集、最期まで連載していた短篇小説まで自ら精選した。本巻は世阿弥の晩年を描く伝記小説『秘花』、九十歳の清少納言が無常を語る『月の輪草子』、二人の女性の愛と性を描いた『爛』と晩年の代表作となった長篇三作を収録した。 |
【関連】
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