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「俺を転売してくれませんか」 尾崎世界観さん〈第171回芥川賞候補作〉『転の声』が刊行

尾崎世界観さんの「第171回芥川賞」候補作を書籍化した『転の声』が文藝春秋より7月11日に刊行されます。

 

プレミアは絶対に裏切らない――”転売される”ミュージシャンの後ろめたい興奮と欲望

今年5月に発売された「文學界」6月号への掲載時から話題沸騰の同作は、第164回芥川賞候補作となった『母影』以来、3年半ぶりとなる中篇小説です(約230枚)。本作『転の声』は、第171回芥川賞候補作に選出されました。

 
【あらすじ】

主人公の以内右手は、ロックバンド「GiCCHO」のボーカリストだ。着実に実績をつみあげてきて、ようやくテレビの人気生放送音楽番組に初出演を果たしたばかり。しかし、以内は焦っていた。あるときから思うように声が出なくなり、自分の書いた曲なのにうまく歌いこなせない。この状態で今後、バンドをどうやってプレミアムな存在に押し上げていったらいいのだろうか……。

そんなとき、カリスマ転売ヤー・エセケンの甘い言葉が以内の耳をくすぐる。「地力のあるアーティストこそ、転売を通してしっかりとプレミアを感じるべきです。定価にプレミアが付く。これはただの変化じゃない。進化だ。【展売】だ」

自分のチケットにプレミアが付くたび、密かに湧き上がる喜び。やがて、以内の後ろ暗い欲望は溢れ出し、どこまでも暴走していく……
果たして、以内とバンドの行きつく先は?
著者にしか書けない、虚実皮膜のバンド小説にしてエゴサ文学の到達点。

 

著者プロフィール

尾崎世界観(おざき・せかいかん)さんは、1984年生まれ、東京都出身。ミュージシャン、作家。クリープハイプのボーカル、ギターとして活動しながら、2016年に半自伝的な小説『祐介』で作家デビュー。

2020年『母影』で芥川賞候補となる。著書に『苦汁100%』『苦汁200%』『泣きたくなるほど嬉しい日々に』『私語と』、千早茜さんとの共著『犬も食わない』対談集『身のある話と、歯に詰まるワタシ』など。

 

転の声
尾崎 世界観 (著)

第171回芥川賞候補作。
「俺を転売して下さい」喉の不調に悩む以内右手はカリスマ”転売ヤー”に魂を売った!? ミュージシャンの心裏を赤裸々に描き出す。

舞台は、ライブチケットの転売が今よりも市民権を得ている社会。ロックバンドのフロントマン・以内右手は、長引く喉の不調が招く不安に追い詰められ、とうとうカリスマ“転売ヤー”に縋りついてしまう。
「俺を転売してくれませんか」
自分たちのチケットに“プレミア”が付いていく。高額取引の痕跡をファンのSNSで確認するたびに、湧き上がる後ろめたい喜び。
尾崎世界観にしか書けない、虚実皮膜のバンド小説にしてエゴサ文学の到達点。

 


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