『デレク・ジャーマンの庭』が約30年ぶりに新訳復刊
創元社は、デレク・ジャーマン著『デレク・ジャーマンの庭』を山内朋樹さんの新訳により約30年ぶりに復刊しました。
不朽の名作、約30年ぶりに新訳復刊
近年再評価の機運が高まる映像作家のデレク・ジャーマン。
彼はHIV感染が判明した1986年から、イギリス南東部の最果ての岬、原子力発電所にほど近いダンジネスに移り住みました。そして死の直前まで「プロスペクト・コテージ」と呼ばれる小屋と庭を慈しみ、育て続けました。
本書はデレク・ジャーマンのエッセイと、彼の友人で写真家のハワード・スーリーが撮影したプロスペクト・コテージのビジュアルブック。日本語訳版は長らく絶版でしたが、製版をデジタルリマスターし、デレク・ジャーマン没後30年記念として新訳復刊されました。
訳者は、著書『庭のかたちが生まれるとき』やジル・クレマンの訳書『動いている庭』が高評を博した、美学者で庭師でもある山内朋樹さん。

プロスペクト・コテージ。元は漁師小屋だった。
![書影裏。庭から望む原子力発電所[左上]。](http://bookpooh.com/wp-content/uploads/2024/05/20240512_a3.jpg)
書影裏。庭から望む原子力発電所[左上]。
デレク・ジャーマンの詩的でクィアな庭づくり
デレク・ジャーマンの庭は、ただ草花が美しいだけの庭ではありません。貝殻、流木、石や古道具、拾い集めたガラクタで作った彫刻、自生していた植物などに、彼自身が植えた低木や花を組み合わせた風景で構成されています。こうした彼の詩的でクィアな庭づくりは、いまも後世に多方面で大きな影響を与え続けています。
〈庭の生と死が、いつしか
「ぼく」の生と死を映し出す――〉
日本語版訳者あとがきより抜粋
(前略)この庭は、ハワード・スーリ――訳者の疑問に真摯に答えてくれた――の写真が物語るように、たんにみずみずしい植物に満たされているだけではない。謎めいた立石群、廃材やくず鉄や戦争遺物からなる奇妙なオブジェがひしめきあい、生きて再生し続けるものと朽ちて滅びたものとが、あるいは規範的なものとクィアなものとがせめぎあい、混淆(こんこう)する場所だ。庭の花や石やオブジェには、花に魅了された少年期にはじまり、同性愛者として生き、HIVとともに暮らした彼の個人史が、草花の風景のただなかに原発や戦争の影をたたえるダンジネスの歴史が、幾重にもたたみ込まれている。(後略)
――山内朋樹
著者プロフィール
[著]デレク・ジャーマン(Derek Jarman)
1942年、ロンドン生まれ。画家、舞台美術家、映像作家。1960年代にはフレデリック・アシュトンと担当した「ジャズ・カレンダー」(1968)やケン・ラッセルと担当した「ザ・レイクス・プログレス」を含む舞台のセットと衣装デザインをおこなう。映像媒体での作品は70年代から90年代にわたる。この期間に「ジュビリー」(1977)、「カラヴァッジョ」(1986)、「ザ・ガーデン」(1990)、「ブルー」(1993)などの映画を制作した。
著書に『ダンシング・レッジ』(1984)、『デレク・ジャーマンのカラヴァッジョ』(1986)、『ザ・ラスト・オブ・イングランド』(1987)のほか 、自伝的な『モダン・ネイチャー』(1991)がある。1994年、エイズ合併症により逝去。
[訳]山内朋樹(やまうち・ともき)さん
1978年生まれ、兵庫県出身。京都教育大学教員、庭師。専門は美学。在学中に庭師のアルバイトをはじめ研究の傍ら独立。庭や美術作品をはじめとする制作物のかたちの論理を、物体の配置や作業プロセスの分析から探究している。
著書に『庭のかたちが生まれるとき』(フィルムアート社、2023年)、共著に『ライティングの哲学』(星海社、2021年)、訳書にジル・クレマン『動いている庭』(みすず書房、2015年)。
![]() | デレク・ジャーマンの庭 デレク・ジャーマン (著), ハワード・スーリー (写真), 山内 朋樹 (翻訳) 不朽の名作『Derek Jarman’s Garden』が、製版のデジタルリマスターにより、約30年ぶり待望の新訳復刊! * 映像作家デレク・ジャーマンの詩的でクィアな庭づくり 〈庭の生と死が、 * 1994年、AIDSでこの世を去った映像作家のデレク・ジャーマン。 写真家ハワード・スーリーの美しい写真とともに綴られる、ジャーマンの穏やかな日々と秘められた激情。 ※植物リスト付 |
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