ミステリー作家・柚月裕子さん初エッセイ集『ふたつの時間、ふたりの自分』が刊行 装画は「GLAY」TERUさんが描き下ろし
『孤狼の血』『盤上の向日葵』などで知られるミステリー作家・柚月裕子さんによる初めてのエッセイ集『ふたつの時間、ふたりの自分』が文春文庫より刊行されました。
デビューから15年の軌跡を追う一冊
『ふたつの時間、ふたりの自分』は、2008年の作家デビューから15年間、各紙誌にて書かれたエッセイを一冊にまとめたものです。
取材先での面白エピソードや失敗談、作家として書き続けることの喜びや苦悩、また、2011年3月11日に起きた東日本大震災での大切な家族との哀別など…作家生活15年の軌跡が詰まった文庫オリジナルエッセイ集です。
【刊行に際して(著者メッセージ)】
「喜び、哀しみ、楽しさ、苦しさ――長いあいだ忘れていた、自分の原点がここにありました。」
本書「ふたつの時間」より抜粋
私のなかには、ふたつの時間が流れている。
震災の日で止まったままの時と、そこから流れている時だ。
ふたつは心で行ったり来たりを繰り返し、ときに自分のなかの時間軸を歪める。
曖昧な時間のなかで、震災で亡くなった両親は笑い、瓦礫が埋め尽くす土地には嗚咽が響き、仕事部屋の窓辺で猫が寝ている。
その歪んだふたつの時間が、自分のなかで結びつくときがある。
被災地を訪れたときだ。
地震に襲われた土地のなかでも、津波の被害を受けた場所は、いまだ震災の傷跡が深く残っている。古い建物と新しい建物、更地が混在し、かつて防風林があった砂浜は、海風にさらされている。
(「ふたつの時間」より抜粋)
カバー装画はGLAY TERUさんによる描き下ろし
カバー装画は、日本を代表する人気ロックバンドGLAYのTERUさんによる描き下ろし。本作を読んだイメージをもとに、困難にも負けず前を向いて咲く、優しく凛とした花を描きました。
<TERUさん プロフィール>
北海道函館市出身。1994年にメジャーデビューしたロックバンドGLAYのヴォーカリスト。デビュー以降、CDセールス、ライブ動員数など日本の音楽シーンをリードし続け、数々の金字塔を打ち立ててきた。
また、故郷・函館にて数度に渡り個展を開催したり、メンバーTAKUROさんのソロアルバム「The Sound Of Life」のジャケットのアートワークを手がけるなど、絵画の制作にも意欲的に取り組んでいる。
著者プロフィール
柚月裕子(ゆづき・ゆうこ)さんは、1968年生まれ、岩手県出身。2008年『臨床真理』で第7回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、デビュー。
2013年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、2016年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。2018年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。
他の作品に『あしたの君へ』『検事の信義』『暴虎の牙』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『教誨』など。
ふたつの時間、ふたりの自分 (文春文庫) 柚月 裕子 (著) 2008年のデビューから2023年現在までの15年間の軌跡を辿る。温かな言葉で綴られた、笑いと涙あふれるエッセイ集。 |
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