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エセ科学と変態性欲が、日本のミステリーを育てあげた!?風間賢二さん”アクロバティカル文学史”『怪異猟奇ミステリー全史』が刊行

風間賢二さん著『怪異猟奇ミステリー全史』

風間賢二さん著『怪異猟奇ミステリー全史』

18世紀英国ゴシック小説に端を発し、はるか東方の島国へと流れ着いて結実した日本のミステリー文化――博覧強記の文芸評論家・翻訳家である風間賢二さんによる、異形の文化文学史にして最良のブックガイド『怪異猟奇ミステリー全史』(新潮選書)が新潮社より刊行されました。

 

ポーからドイルへ、そして乱歩、横溝から、綾辻行人さん、京極夏彦さんまで――日本の探偵小説、そして本格・変格ミステリーを生みだした源泉を探る

「アッシャー家の崩壊」挿画

「アッシャー家の崩壊」挿画

本書は、18世紀にアンチ・フランス=反古典主義から興ったゴシック文化伝播史であり、広い視野からの西洋文化史・文学史であり、戦前戦後の日本文化史・文学史であり、ミステリー発展史でもある、文学史探偵による詳密な調査ファイルです。

心霊主義者たちによる交霊会

心霊主義者たちによる交霊会

 
<あらすじ>

探偵小説、本格・変格推理小説、ひいては新本格ミステリーまで、あらゆる日本のミステリーの源泉は、18世紀英国ゴシック小説にあった――そんな荒技にも思える文学史説を、博覧強記の文芸評論家・翻訳家である著者が、心霊主義、スピリチュアリズム、擬似科学、進化論・退化論、エログロ、変態性欲などなど、あらゆる西洋文化・思想・学問をスパイスに用いて超絶調理で調理し、解明する激旨圧巻の文化/文学史が、ここに誕生した。

ピンカートン探偵社ロゴマーク

ピンカートン探偵社ロゴマーク

 

著者コメント

副題に「猟奇耽異グラン・ギニョル探偵小説への誘い」と付けようと思ったが、煽りすぎ、誇大広告になりかねないのでやめました。でも、そんな雰囲気の内容です。

グラン・ギニョルのポスター

グラン・ギニョルのポスター

 

本書の構成

はじめに

第一章 ゴシックこそがミステリーの源流
ゴシック小説の始祖『オトラントの城』/偽書アラカルト/ゴシックの真髄はフェイク精神/恐怖の美

第二章 恐怖のふたつのタイプ
過剰なセンシビリティ/崇高美サブライムを内包する恐怖/エログロ・ホラーの元祖/サスペンスとグロスアウトの技法/社会派サスペンスの始祖/アメリカ産ゴシック・ロマンス第一号

第三章 ポーとセンセーション・ノベル
探偵小説と反探偵小説を生んだポー/ニューゲイト・ノベルの進化形/十九世紀メロドラマの影響

第四章 スピリチュアリズムとオカルト探偵
ディケンズもキャロルもトウェインも/見ることは読解すること/擬似科学の趨勢/オカルト探偵登場!/オカルト探偵跳梁跋扈/実在したオカルト探偵

第五章 ドイル、そしてフロイトへ
ホームズにウンザリしていたドイル/名探偵ホームズの〈復活〉、そして〈再生〉/世界の謎に挑む探偵たち

第六章 内なる獣人、吸血鬼、火星人
観相学・骨相学がエセでなかった時代/細菌学と犯罪学は同類!?/進化論と退化論は表裏一体だった

第七章 黒岩涙香と翻案小説
画期的だった涙香流翻案小説/探偵小説非文学説/時期尚早だった涙香渾身の短編ミステリー

第八章 ホームズとルパン、そして捕物帖
ホームズのライバルたち/悪漢ヒーロー、ルパンの系譜/和製ホームズは怪奇幻想がお好き

第九章 日本SFの始祖、押川春浪と武侠冒険小説
高橋お伝の性器標本伝説!?/〈毒婦物〉、〈復讐物〉から〈人情物〉へ/じつはSFに近い政治小説も多かった/押川春浪が生んだ武侠冒険SF小説

第十章 文豪たちの探偵小説
アンチ翻案探偵小説の純文学作家たち/日本独自の推理小説は谷崎潤一郎から/佐藤春夫そして芥川龍之介の探偵小説

第十一章 雑誌「新青年」と江戸川乱歩、そして〈変態〉
変態性欲が〈変格〉探偵小説を生んだ/性科学に救われたオスカー・ワイルド/輸入された〈変態性欲〉

第十二章 乱歩とエログロ・ナンセンスの時代
切断されオブジェ化される女体/雑誌「新青年」のモダン化と乱歩の休筆/変態心理が『陰獣』を生んだ/乱歩の虚構世界にも似た現実の事件

第十三章 探偵小説から推理小説、そしてミステリーへ
夢野久作からの探偵小説第二期黄金時代/厳しい検閲がジャンルの裾野を広げた?/みな仲良く“ミステリー”となった

第十四章 〈新本格〉の登場、時代はパラミステリーへ?
〈新本格〉ってなんだろう?/怪異猟奇短編のショーケース『眼球綺譚』/特殊設定ミステリーの世界/もはやパラミステリーと呼ぶべき?/今日の怪奇幻想ミステリー

主要参考文献
人名索引
作品名索引

 

著者プロフィール

著者の風間賢二(かざま・けんじ)さんは、1953年生まれ。東京都出身。武蔵大学人文学部卒業。早川書房を退社後、幻想文学研究家・翻訳家として活躍。1998年に『ホラー小説大全』(角川選書)で第51回日本推理作家協会賞評論部門を受賞。

主な著書に、『ダンスする文学』(自由国民社)、『スティーヴン・キング論集成』(青土社)など。訳書に、スティーヴン・キング『ダークタワー』シリーズ(角川文庫)、キャサリン・スプーナー『コンテンポラリー・ゴシック』(水声社)などがある。

 

怪異猟奇ミステリー全史 (新潮選書)
風間 賢二 (著)

オカルト、エログロが日本探偵小説を生んだ!? 博覧強記の文学史がここに。18世紀英国ゴシック小説は、フェイク精神、心霊主義、疑似科学、進化論・退化論、観相学・骨相学、セクソロジー、変態性欲と、あらゆる思想・学問を吸収し、日本へと渡ってきた。黒岩涙香に始まり、江戸川乱歩、横溝正史を経て、綾辻行人、京極夏彦へ――怪異猟奇を孕んだ日本ミステリーの成立を解き明かす、異端の文化史。

 


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