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誰にも搾取されない〈平等な社会)はなぜ独裁を許したのか? ジョージ・オーウェル『動物農場』をコミカライズ

ジョージ・オーウェル著『動物農場』をコミカライズした『オーウェル『動物農場』を漫画で読む』(画:ベルナルディ・オディールさん、訳:田内志文さん)が、いそっぷ社より刊行されました。

 

「すべての動物は平等なり。だが一部の動物は他の者よりさらに平等なり」

イギリスの作家、ジョージ・オーウェルが1945年に発表した小説『動物農場』。
――人間から搾取されてきた農場の動物たちが一斉蜂起して「動物主義」の旗のもと、誰もが平等な社会を築こうとする。飛び抜けた知識をもつ豚たちが自然と指導者の地位につき、働いただけの成果を与えられる動物たちは幸せな毎日を送っていた。

しかし指導者の豚の間で権力争いが始まり、やがて一頭の豚が権力を一手に掌握する。彼は反逆を企てた者たちを処刑するなど恐怖政治を敷くようになり、あろうことか人間との接近を図るまでになる――。

 
本書は、『1984』で知られるオーウェルの寓意に溢れた小説を遺族が公認する形で初のカラー漫画化。〈平等な社会〉はなぜ独裁を許したのか、そして圧政を強いる権力に立ち向かうには何が必要なのか。「ソ連批判の書」という側面にとどまらない、さまざまな教訓に満ちた作品となっています。

 

『オーウェル『動物農場』を漫画で読む』ストーリー

舞台はイギリスのとある農場。主人のジョーンズさんが寝入ったのを見計らって、長老のメイジャーじいさんが他の動物たちに遺言ともいうべき演説を聞かせていました。

「動物の暮らしは、惨めな奴隷の暮らしだ」とし、諸悪の根源は人間にある。今こそ、人類を転覆させるのだ。「反逆だ!」と訴えたのです。

メイジャーじいさんが死の間際に語った熱いメッセージは動物たちの心に深く刻印されました。

スノーボール、ナポレオン、スクウィーラーの3頭の豚を中心に「動物主義」という思想体系を作り上げ、反逆のチャンスを窺っていたところ、主人や下働きの怠慢ぶりに腹を立てた動物たちは蜂起、ついに人間たちを追い出しました。

人間を追い出した動物たちは「二本足の者はすべて敵なり」「すべての動物は平等なり」といった7つの戒律を掲げ、農場の名前を「動物農場」と改めました。

頭のいい豚たちが自然と指導者になり、他の動物たちに指示をあれこれと与えましたが、今までより食事も増え、皆が幸せな毎日を送っていました。

指導者のスノーボールとナポレオンの間でいろいろと意見の食い違いが起こるようになり、スノーボールが発案した風車を立てる計画に着手すべきかの投票が行われることになりました。会合当日、熱弁をふるうスノーボールに対しナポレオンがとった行動は……。

ナポレオンのスノーボール追放は成功し、ナポレオンが権力を掌握しました。

一方、順調に建設が進んでいた風車はある日、農場を襲った暴風により破壊。ナポレオンはその災厄をスノーボールの仕業だとでっちあげ、死刑を宣告したのです。ここに恐怖政治が静かに始まろうとしていました――。

 

著者プロフィール

 
■原作:ジョージ・オーウェル

1903年、植民地時代のインドにて英国公務員の息子としてベンガルのモティハリで生まれる。イートン校で学んだのち、1922年にビルマにてインド帝国警察に加わり、1927年に除隊して作家になった。

1933年から49年にかけて小説やエッセイ、ノンフィクションなどを発表。1945年に『動物農場』が大成功を収め、1949年には『1984』がそれを凌ぐ記録的ヒット作となった。『1984』の刊行から数か月後の1950年1月、ロンドンにて死去。

他に『パリ・ロンドン放浪記』『ファシズムとは何か』などを著し、20世紀でもっとも重要な作家のひとりとされる。

 
■編・絵:ベルナルディ・オディールさん

1967年、ブラジルのペロタス生まれ。漫画家、画家。これまでにロボ原作の『コパカバーナ』、アンジェリカ・フレイタス原作の『グアダルペ』を出版。作品はいくつかのコミック・アンソロジーに掲載されており、短編作品やイラストの数々はブラジル国内において、『フォーリャ・ジ・サンパウロ』『オ・グロボ』『ル・モンド・ディプロマティック・ブラジル』などの新聞や雑誌などに掲載され続けている。

 
■訳:田内志文(たうち・しもん)さん

1974年生まれ。『オーウェル『1984』を漫画で読む』(いそっぷ社)を訳したほか、主な訳書にジョン・コナリー『失われたものたちの本』(創元推理文庫)、エドワード・バートン=ライト『シャーロック・ホームズの護身術/バリツ』(平凡社)、アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』、メアリー・シェリー『新訳 フランケンシュタイン』(以上、角川文庫)など。

元スヌーカー選手で、アジア選手権、チーム戦世界選手権の出場経験を持つ。

 

オーウェル『動物農場』を漫画で読む
ジョージ・オーウェル (著), ベルナルディ・オディール (イラスト), 田内志文 (翻訳)

<原作小説>

動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)
ジョージ・オーウェル (著), 水戸部功 (イラスト), 山形浩生 (翻訳)

飲んだくれの農場主ジョーンズを追い出した動物たちは、すべての動物は平等という理想を実現した「動物農場」を設立した。守るべき戒律を定め、動物主義の実践に励んだ。農場は共和国となり、知力に優れたブタが大統領に選ばれたが、指導者であるブタは手に入れた特権を徐々に拡大していき……。権力構造に対する痛烈な批判を寓話形式で描いた風刺文学の名作。『一九八四年』と並ぶ、オーウェルもう一つの代表作、新訳版

 


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