20世紀反戦文学の金字塔『ジョニーは戦場へ行った』が新訳で刊行
第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争――アメリカ史の “暗部” を無名兵士の視点から告発した、ダルトン・トランボによる反戦文学の金字塔『〔新訳〕ジョニーは戦場へ行った』(訳:波多野理彩子さん)がKADOKAWAより刊行されました。解説は都甲幸治さんが担当。
青年はアメリカにすべてを奪われた――20世紀反戦文学の金字塔
『ローマの休日』『黒い牡牛』『スパルタカス』……赤狩りによってハリウッドから追放されながら、数々の歴史的名作を生み出した稀代の脚本家、ダルトン・トランボ。『ジョニーは戦場へ行った』は彼が第二次世界大戦中に発表し、過激な反戦小説として波紋を呼んだ作品です。
【あらすじ】
第一次世界大戦下、仏戦線での砲撃により、視覚・聴覚・味覚・嗅覚と四肢を失った青年ジョー。すべてを奪われ、後悔の中で絶望に囚われた彼が、ふたたび世界と繋がるために見つけた希望とは?
アメリカで「発禁」処分に?
(著者まえがきより要約)
本書はアメリカ国内で長く流通していなかったため「発禁書」であったと記述する本もある。
実際には「発禁」は事実ではなかったが、絶版状態が続いていた。
第二次世界大戦下、極右派や親ナチス勢力に利用されることを恐れたトランボは、大戦が終わるまで本書を復刊すべきではないと考えた。
本書の目次
まえがき(一九五九年)
追 記(一九七〇年)
第一部 死者
第二部 生者
訳者あとがき
解 説――蘇るトランボの遺志 都甲幸治
著者プロフィール
■ダルトン・トランボ
1905年生まれ、米国コロラド州出身。1930年代より脚本家として活躍、1939年に本作『ジョニーは戦場へ行った』を発表、同年の米国書店賞(全米図書賞の前身)を受賞した。1947年、赤狩りによって投獄された「ハリウッド・テン」の1人として映画界から追放される。別名義で執筆した「ローマの休日」「黒い牡牛」でアカデミー賞原案賞を受賞。後年は、本作を自ら監督し映画化。1971年、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。1976年没。
■訳:波多野理彩子(はたの・りさこ)さん
英日翻訳者。一橋大学社会学部卒業。訳書に『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(角川文庫)、『人の心は読めるか? 本音と誤解の心理学』(ハヤカワ文庫NF)、『月をマーケティングする アポロ計画と史上最大の広報作戦』(共訳、日経BP社)など。
![]() | 〔新訳〕 ジョニーは戦場へ行った (角川新書) ダルトン・トランボ (著), 波多野 理彩子 (翻訳) 戦場で触覚以外の全感覚と四肢を奪われた青年ジョー。世界から追い出された彼が思索と闘争の果てに見出した希望とは? |
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