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前代未聞の「羊飼い作家」河﨑秋子さん誕生秘話エッセイ『私の最後の羊が死んだ』が刊行

2024年1月『ともぐい』で第170回直木賞を受賞した作家・河﨑秋子さんの自伝的初エッセイ『私の最後の羊が死んだ』が小学館より刊行されました。

 

私はちゃんと羊飼いだった――「作家・河﨑秋子」誕生秘話エッセイ

酪農業と羊飼いを稼業としていた河﨑秋子さんはなぜ酪農から離れ、小説家となったか。最初の一頭を飼ってから、最後の一頭の出荷を見届けるまでの日々や家族の問題をユーモアも交えつつ真摯に綴る初自伝『私の最後の羊が死んだ』が発売されました。

 
《「お仕事は何を?」
「羊飼いです」
「……え?」
という、なんとなく微妙なやりとりを重ねてきたのは、ひとえに日本人は羊飼いという職業に馴染みが薄いせいであるのかもしれない。》
(本文より)

 
酪農家の娘として生まれたからこそ、その過酷さは身にしみており、大学卒業後も農業に関わるつもりはなかった。
だが大学時代に教授宅で催されたバーベキューで出逢ってしまったのだ、美味しい羊肉と――。
「自分でも生産してみたい」との思いから一念発起しニュージーランド実習へ。

さまざまな縁にも助けられながら、勉強を重ね、日々実直に羊を育て、出荷し、羊飼いとして収入を得られるようになった。やがてお得意先のレストランシェフに「河﨑さんとこの肉はお客さんに出すのが勿体ないほど美味しい」と言われるまでに。

 
順調に回り始めた羊飼い生活を、それでもなぜやめる決断をしたか、そしていかにして小説を書き始めたのか。「小説家前夜」の日々が綴られます。

 

編集担当 コメント

直木賞作家・河﨑秋子さん初のノンフィクションです。
河﨑さんが羊飼いであったことは、すでにご存じのかたも多いかと思いますが、実際の羊飼い生活がどのように始まったか、そしてなぜ、どのように、終えられたかまではあまり知られていないのではないでしょうか。

命を育て、人間に美味しく食べられる肉にする――
「命あるもの」への真っ直ぐでフェアな眼差しは、河﨑さんの小説の大きな魅力ですが、実際に自身が養育する羊に対しても同様に注がれているのが印象的です。

今作では羊飼いの日常以外にも、日本の酪農経営事情、<メーメー教羊派>と<メーメー教山羊派>が繰り広げる終わりなき論争、北海道民のソウルフード・ジンギスカンが美味しくなった背景に至るまで、羊を軸として縦横に筆が走ります。

ところどころでクスッと笑えるところもあり、骨太な小説ファンの方にはぜひ河﨑さんのユーモアあふれる一面もお楽しみいただきたいです。

 

著者プロフィール

河﨑秋子(かわさき・あきこ)さんは、1979年生まれ、北海道別海町出身。2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。2014年『颶風の王』で三浦綾子文学賞を受賞し翌年デビュー。同作は2015年度JRA賞馬事文化賞も受賞。

2019年『肉弾』で第21回大藪春彦賞、2020年『土に贖う』で新田次郎文学賞、2024年1月『ともぐい』で第170回直木賞を受賞。

他の著書に『鳩護』『絞め殺しの樹』『介護者D』『鯨の岬』『清浄島』『愚か者の石』『銀色のステイヤー』などがある。

 

私の最後の羊が死んだ
河崎 秋子 (著)

前代未聞の「羊飼い作家」誕生秘話エッセイ

最初の一頭を飼ってから、最後の一頭の出荷を見届けるまで
「羊飼い一代記」を綴った傑作エッセイ

 


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