直木賞作家・井上荒野さん〈愛の行方の複雑さ〉を描く『猛獣ども』が刊行
恋愛小説の名手で直木賞作家の井上荒野さんによる長編小説『猛獣ども』が春陽堂書店より刊行されました。
「姦通」していた男女が熊に殺された――閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と6組の夫婦に何をもたらしたのか
『あちらにいる鬼』(朝日新聞出版)、『照子と瑠衣』(祥伝社)などの人気作で知られる直木賞作家の井上荒野さんが「自分にとって大切な小説になりました」と語る著者渾身の長編小説『猛獣ども』。
装丁は井上荒野作品を数多く手掛けた大久保伸子さん、装画は小川糸さん『糸暦』(白泉社)、角田光代さん『あなたを待ついくつもの部屋』(文藝春秋)の人気イラストレーター・杉本さなえさん(Instagramフォロワー9万9千人)が担当。
【あらすじ】
閑静な別荘地で逢引き中の男女が熊に殺された――。
避暑地の美しい景色の中に暮らす人々と、別荘を管理する若い管理人の男女をめぐる不穏な人間模様、さまざまな夫婦の複雑な心理を丁寧に描く。
(以下登場人物の言葉より)
「このふたりは姦通していた」何度読んでも笑ってしまう。まるで私宛の手紙みたいだ。
――小林七帆
伽倻子と七帆はひと続きなのか? 結局俺は、伽?子を愛したときから、ずっと同じことをしているだけなのか?
――小松原慎一
そりゃあそうよね。男と女のことなんて、全部間違いみたいなものよね。
――柊レイカ
ふたりはとんでもなくうまくいっている、幸せな夫婦なのだから、相手の挙動の変化には敏感なのだ。みどりはアトリエに忍び込むことになった。そして知った。
――神戸みどり
テントの外には熊が、人喰い熊がいるのだ。だが純一は、再び愛の体に没頭する。そう、愛に没頭するのだ。
――野々山純一
<先に読まれた方々の感想を紹介>
万華鏡が回るように、それぞれの夫婦の鬱屈が描かれていて、のぞき穴から登場人物をのぞき見しているような気持ちになりました。
男女の心理を細かく描く小説を久しぶりに読みました。
(イラストレーター杉本さなえさん)
服を着ていても、言葉を発しても、誰かを愛しても、人はみんな、猛獣です
(代官山 蔦屋書店 間室道子さん)
おなじ時間を共有しながらもすれ違う男と女。
たとえ夫婦であっても例外ではない。
かつて愛した男も熱い思いを寄せた女も、いとも簡単に切り捨ててしまう。
日常に潜む悪意を淡々と描くリアルヒューマン小説は、井上荒野にしか描けないだろう。
(本の王国 宮地友則さん)
著者よりメッセージ
「愛の行方」を書きながら、
そもそも「愛」ってなんなのだろうと
ずっと考えていました。
自分にとって大切な小説になりました。
――井上荒野
著者プロフィール
井上荒野(いのうえ・あれの)さんは、1961年生まれ、東京都出身。成蹊大学文学部卒業。1989年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞してデビュー。
2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞、2008年『切羽へ』で第139回直木賞、2011年『そこへ行くな』で第6回中央公論文芸賞、2016年『赤へ』で第29回柴田錬三郎賞、2018年『その話は今日はやめておきましょう』で第35回織田作之助賞を受賞。
他の作品に『もう切るわ』『ひどい感じ 父・井上光晴』『夜を着る』『リストランテ アモーレ』『キャベツ炒めに捧ぐ』『あちらにいる鬼』『あたしたち、海へ』『そこにはいない男たちについて』『百合中毒』『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』『小説家の一日』『照子と瑠衣』『ホットプレートと震度四』『錠剤F』『僕の女を探しているんだ』『私たちが轢かなかった鹿』などがある。
![]() | 猛獣ども 井上荒野 (著) |
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