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『ソフィーの世界』から30年――著者初のエッセイ『未来のソフィーたちへ 「生きること」の哲学』が刊行

装幀:坂川朱音/装画:福田利之

装幀:坂川朱音/装画:福田利之

世界的ベストセラーの哲学小説『ソフィーの世界』の作者 ヨースタイン・ゴルデルさんによる初の自伝的哲学エッセイ『未来のソフィーたちへ 「生きること」の哲学』がNHK出版より刊行されました。

 

「哲学する心」はおとなになる前に生まれる

「わたしはなぜ生まれてきたのか?」
「なんのために生きているのか?」
「わたしはいつか……死ぬ」

だれしも一度はこんなことを考えます。しかも、人生のわりと早い時期に。それは哲学のはじめの一歩と言っていいでしょう。

 
本書は、世界的ベストセラーとなった哲学小説『ソフィーの世界』の著者、ヨースタイン・ゴルデルさん初の自伝的エッセイです。6月27日放送のNHK「あさイチ」の「ロングセラーのひみつ」コーナーで『ソフィーの世界』が取り上げられ、そちらも再び注目を集めています。

 
ノルウェーの豊かな自然のなかで育ったゴルデルさんは、子どものころ森のなかで「自分は自然の一部であると同時に、世界そのものでもある」ということに気づく衝撃的な体験をします。命の謎に目覚めた少年は、それ以来ずっと「存在すること」について考えつづけています。

 
そんな彼が人生を振り返り、自身の孫たちに宛てた手紙という形式で著したのが本書です。不覚にも『ソフィーの世界』に書き洩らしてしまった重要な哲学的課題についても、本書で初めて明らかにしています。

 
未来のソフィーたちのために、今のわたしたちに必要なのは、何をおいても「生について」哲学することだ、と著者は言います。6人の孫たちに語りかける独特の筆致で自然環境、思想、老い、愛、生と死……幅広いテーマについて科学的にかつやさしく、人類にとって最も重要な問いについて考え、人生をどう生きるかのヒントを与えてくれます。

すべてをあたりまえに受け入れるおとなになってしまう前に、ゴルデルさんとともに思考の旅をしてみませんか? これは現代を生きるすべての人に向けて発せられたメッセージです。

 
★本書「第1章 魔法の国」をWEBで全文公開:https://mag.nhk-book.co.jp/article/54004

 

あなたは自分の存在に驚きつづけていますか?

〔本文より抜粋(一部編集)〕

「わたしは生まれて初めて、自分はいずれ死ぬのだと理解した。それはいまこの世界にいることの代償なのだと。……それでおとなたちに疑問を投げかけてみた。『ぼくたちが生きてるのって、変じゃない?世界が存在するって一そもそも、何かが存在するって、変じゃない?』ところが、おとなたちは世界のことをまったくふつうだと思っているようだった。でも、わたしにはわかる。おとなたちはまちがっているんだ。…わたしは、おとなになんかならないと心に決めた。この世界をあたりまえだと受け入れてしまうようなおとなには、けっしてなるものか。」

 

本書の目次

はじめに

第1章 魔法の国

第2章 テントウムシ

第3章 心を読む男

第4章 わたしの祖父

第5章 超心理学

第6章 超常現象

第7章 地球という惑星

第8章 クロノメーター

第9章 時間と空間

第10章 地質時代

第11章 電波信号

第12章 地球の持続可能性

第13章 光学的化石

第14章 ラタトスク

第15章 整形外科医と宇宙飛行士

第16章 九つの脳

第17章 いま問うべきこと

第18章 黄昏

訳者あとがき

 

著者プロフィール

(c) Celina Øier

(c) Celina Øier

ヨースタイン・ゴルデル(Jostein Gaarder)さんは、1952年生まれ、ノルウェーのオスロ出身。ベルゲンの高等学校で哲学と思想史を教えながら作品を発表。のちに執筆活動に専念。世界的ベストセラーとなった哲学史小説『ソフィーの世界』(NHK出版/1995年)は、2024年現在67の言語に翻訳されている。本書は著者初のエッセイ。

 

未来のソフィーたちへ: 「生きること」の哲学
ヨースタイン・ゴルデル (著), 柴田 さとみ (翻訳)

世界を守る、哲学で!
世界的ベストセラーの哲学小説『ソフィーの世界』の作者が、いまこの惑星に生きるすべての人にストレートに語る、初の自伝的哲学エッセイ。
わたしたちは、46憶年の地球の歴史のなかで、地球とそこに生きるものにとって決定的な時代となるであろう「150年」のただなかを生きている。わたしたちの生き方が、次の世代が22世紀を無事に迎えることができるか否かの鍵を握る。
ゴルデル自身の「生きる哲学」はどのようにして育まれてきたのか? これまでの作品のなかで彼がわたしたちに伝えたかったことは何なのか? 『ソフィーの世界』で書き洩らした重大な哲学的問いとは何だったのか?
6人の孫たちに語りかける独特の筆致で、自然環境、思想、老い、愛、生と死、幅広いテーマについて科学的にかつやさしく、人類にとって最も重要な哲学的問いについて考え、これからの人生をどう生きるかのヒントを与えてくれる。

きっとだれしも子どものころに、自分がいずれ死ぬということについて初めて気づいたときのことを覚えているだろう。人は、人生のどこかの時点で、かならず命のはかなさに気づくときがくる。けれど、そのことにいつまでも思い悩むことなく日々の生活を営むようになる。ときには死の恐怖から逃れるために、宗教や超自然的な何かにすがることもあるだろう。それでも、命の終わりはまちがいなくやってくる。
「世界がある」ということ、「ここに生きる」ということ、それを突き詰めていくのが哲学だ。宇宙の歴史から見ればわたしたちの命など瞬きほどの時間にも満たないくらい短い。しかし、現代のわたしたちの生き方は、連綿と続いてきた人類の歴史を中断させてしまう可能性を秘めている。化石燃料を使い尽くし、自然環境を人為的な力で変えるほどの規模でこの世の生を謳歌するわたしたちを、次の世代は許してくれるだろうか? いまのわたしたちに必要なのは何をおいても「生きること」の哲学だ。
著者は言う。
「自分たちの時代が次の世代の人びとの時代より重要であるかのように生きてはいけない。」
「わたしたちはいつかきっと、未来の子孫たちによって裁きの場に立たされることになるだろう。」
いますぐ、わたしたちはこの生き方を変えなければならない。未来のソフィーたちのために。

 
【関連】
いまこの惑星に生きているすべての人は、地球にとって決定的な時代となるであろう「150 年」のただなかにいる | NHK出版デジタルマガジン

 


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