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待川匙さん「第61回文藝賞」受賞作『光のそこで白くねむる』が刊行

第61回文藝賞を受賞した、待川匙さんの「光のそこで白くねむる」が書籍化され、河出書房新社より刊行されました。

なお、第61回文藝賞を同時受賞した松田いりのさん著『ハイパーたいくつ』も同時発売されています。

 

平凡な田舎に呪われた異界が立ち上がる――。

 
【あらすじ】

十年ぶりに、坂と崖に囲まれた故郷の田舎町を訪れた「わたし」。墓地へと続く道を進むと、死んだはずの幼馴染「キイちゃん」の声が語りかけてくる。
行方不明の母、蒙昧な神のごとき父、汚言機械と化した祖母……不確かな記憶が流れ込み、平凡な田舎に呪われた異界が立ち上がる。

静謐な戦慄が迸る、第61回文藝賞受賞作!

 
《キイちゃんが、にぃ、と笑った。目に見えない、体も顔もない、ただ意識に入りこんでくるだけの死んだキイちゃんの存在が、それでも、にぃ、と笑った気がした。

(中略)

わたしが本当のことを言わないと感じているから、わたしにころされたと思いこんでいるから、大人のわたしがうそをつくならば、子供のキイちゃんも、うそをつき返してやろうとたくらんでいるのだ。》
(本文より)

 
<選考委員の選評より>

【選考委員】(左から)小川哲さん、角田光代さん、町田康さん、村田沙耶香さん  

【選考委員】(左から)小川哲さん、角田光代さん、町田康さん、村田沙耶香さん 撮影:宇壽山貴久子

「パラノイアックな人物の視点を描ききる勇気と高度な文章技術。
新人離れした作品。」
――小川哲さん

「誰が存在したかも、語り手の性別すらも明示されないあいまいさ。
たしかなことが何ひとつないからこそ、この小説は強い。」
――角田光代さん

「尋常の景色、おそらくは平穏で退屈な田舎の景色をそのまま描いて異常の景色となす不思議の筆力。美事だった。」
――町田康さん

「特別な文体と出会う喜びを覚え、言葉自体に強烈に惹きつけられた。
この作品が宿しているものの大きさに、ただただ圧倒された。」
――村田沙耶香さん

 

著者プロフィール

待川匙(まちかわ・さじ)さんは、1993年生まれ、徳島県生出身。滋賀県育ち。

2024年、「光のそこで白くねむる」で第61回文藝賞を受賞。

 

文藝賞について

文藝賞は、1962年に文芸誌『文藝』で創設された公募の新人文学賞です。河出書房新社が主催。

日本における新人作家の登竜門とされ、第1回受賞作である高橋一巳さん『悲の器』をはじめ、田中康夫さん『なんとなく、クリスタル』、山田詠美さん『ベッド タイム アイズ』、綿矢りささん『インストール』、白岩玄さん『野ブタ。をプロデュース』、山崎ナオコーラさん『人のセックスを笑うな』、宇佐見りんさん『かか』、遠野遥さん『改良』など、実力と才能を兼ね備えた作家を多数輩出しています。

ちなみに、創設当時の『文藝』の編集長は坂本一亀さんで、音楽家・坂本龍一さんの父。

 

 


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