韓国で2年連続年間ベストセラー!新鋭ホラー作家チョ・イェウンさん『カクテル、ラブ、ゾンビ』が刊行
韓国で10万部を突破した、新鋭ホラー作家チョ・イェウンさんの短編集『カクテル、ラブ、ゾンビ』(訳:カン・バンファさん)がかんき出版より刊行されました。
新鋭No.1ホラー作家がいざなう、韓国発「世にも奇妙な物語」
本書には、表題作「カクテル、ラブ、ゾンビ」から、ドラマ化された衝撃のデビュー作「オーバーラップナイフ、ナイフ」まで圧巻の4篇が収録されています。
ガスライティング、環境破壊、家父長制、暴力といった切実な社会問題を含んだ4篇の物語は、長い間、見過ごしてきた心のなかの深く暗いところにある感情、なかでも女性が覚える感情を丁寧に掬い取っています。感情のなかには、誰かによって引き出され、ありありと表現されて初めてその存在を認められるものもあります。だからこそ、この「丁寧に掬い取る」という態度が、本書全体のトーンをつくり上げ、小説だから可能な共感を生み出します。
残酷なシーンほど感じられるのは、不思議なことに優しさと温もりです。わたしたちが受ける苦痛は当たり前ではない。わたしたちはもっと怒ってもいいのです。
『カクテル、ラブ、ゾンビ』収録作品
◆「インビテーション」
チェウォンの喉には十七年間、骨が刺さっている。彼氏のジョンヒョンとの関係に亀裂が生じてから、さらに喉の痛みに苛まれた。ある日、チェウォンの前にぼやけた印象の女テジュが現れる。それ以来、チェウォンの前で不気味な存在感を増していく。チェウォンはまるでテジュから招待を受けたかのように正体を追跡しはじめる……
◆「湿地の愛」
水辺の幽霊「ムル」は、川で退屈な日々を送っていたとき、林のなかを歩いていた「スプ」に出会う。その後、二人はしばしば会いながら静かに心を通わせる。ところが、林を出入りする者たちのせいで、ムルは自分が幽霊になったころに感じていた恨みと怒りに再び包まれる……
◆「カクテル、ラブ、ゾンビ」
退勤後、いつものように会社の仲間たちとお酒を飲んで帰ってきた父が、ゾンビになってしまった。ニュースに出てきたゾンビウイルスの一次感染者はすべて殺された。政府が措置法案を設置するまでの間だけでも家で匿おうとするが、すでに人間の理性を失っている父は……
◆「オーバーラップナイフ、ナイフ」
父が母を殺した。わたしは父を殺した。その後、自らを殺してひとつの後悔をした。少しだけ状況が違ったら母を救えたただろうか。そのとき誰かの声が聞こえた。「時間を戻してほしいか?」
一途に物語を追う不器用な愛情が凝縮された一冊
(「日本語版への序文」より編集・抜粋)
日本の読者のみなさま、初めまして。『カクテル、ラブ、ゾンビ』の著者チョ・イェウンです。この場を借りてご挨拶できてとても嬉しいです。
学生時代、数学の宿題をするのが嫌でネットサーフィンをしていたとき、『ロング・ラブレター~漂流教室~』という日本のドラマを知りました。西洋が背景になった作品以外で、おそらく初めて観たSFファンタジーものだったはずです。仮想の世界を背景にしながら現実の問題を語る、立体的かつ魅力的なキャラクターに出会えたありがたい作品でもあります。それ以来、世界中のさまざまなコンテンツを吸収しながら育ちましたが、あれほど熱を上げた作品はいくつもありません。
日本の作家では、宮部みゆきさんと恩田陸さんの作品を愛読していました。少し前までは村田沙耶香さんの小説と前川知大さんの戯曲にはまっていましたし、伊藤潤二さん、岡崎京子さん、藤本タツキさんの漫画も大好きです(ほかにもたくさんありますが、全部挙げるのはちょっと大変ですね)。
自分もまた物語と恋に落ちた人間として、誰かが恋に落ちてくれそうな物語を書きたいといつも思っています。
この本には初期の短篇小説が四篇収められています。飾られていない生のままの欲望、一途に物語を追う不器用な愛情が凝縮されています。わたしの書いた物語がより多くの方たちに、垣根なく届いてくれたら、そうして見知らぬ世界に、活字と想像力だけで夢中になれる経験をプレゼントできたらと思います。言語の壁を超えて、ここにこめられた未熟ながらも真摯な心が、日本の読者のみなさまに伝わることを願っています。
著者プロフィール
■チョ・イェウンさん

(c)Hae Ran
作家。2016年に短篇「オーバーラップナイフ、ナイフ」で第2回黄金の枝タイムリープ公募展にて優秀賞を受賞し、作家デビュー。KBSでスペシャルドラマ化された。また、本作が収録された『カクテル、ラブ、ゾンビ』は10万部突破のベストセラーとなる。
著書に『ニューソウルパーク ゼリー売りの大虐殺』『テディベアは死なない』『トロピカル・ナイト』(いずれも未邦訳)などがある。良い話とはなにかについて悩みながら作品活動を続けている。
■訳:カン・バンファさん
翻訳家。韓日・日韓翻訳講師。訳書に、キム・チョヨプさん『わたしたちが光の速さで進めないなら』『この世界からは出ていくけれど』(共訳、早川書房)、チョ・ウリさん『私の彼女と女友達』(書肆侃侃房)、キム・ダスルさん『誤解されても放っておく』(三笠書房)ほか多数。
![]() | カクテル、ラブ、ゾンビ チョ・イェウン (著), カン・バンファ (翻訳) 銃とナイフ、鮮血と悲鳴、憎悪と愛情―― 長い間、見過ごしてきた心のなかの深く暗いところにある感情を丁寧に掬い取った、圧巻の4篇を収録。 |
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