ミステリーより面白い!藝大の美術史を書籍化『東京藝大で教わる西洋美術の謎とき』が刊行
東京藝術大学美術学部教授・佐藤直樹さん著『東京藝大で教わる西洋美術の謎とき』が世界文化社より刊行されました。
藝大の授業をもとにできた目からウロコの教養書『東京藝大で教わる西洋美術の謎とき』
本書は、『東京藝大で教わる西洋美術の見かた』『東京藝大で教わるはじめての美学』の続編で、前作同様、東京藝術大学で実際に行われている授業に基づいた西洋美術の入門書です。
一般向けに専門用語は使わず分かりやすい記述になっていますが、内容の学問的な水準は保たれるよう工夫されています。西洋美術を深掘りしたい人なら、特別な知識がなくても十分に楽しめます。収録された12のテーマに沿い、絵画の謎を解き明かす感覚で読み進めることができます。
◆本物とは似て非なる「本物らしい」版画が流布する!
アルブレヒト・デューラーの版画作品《犀》には、実際のインド犀にはない2本目の角(!)が背中に描かれています。この実物とは異なるイメージはその後広く流布し、ついには日本にまで伝わるのです。ときとして優れた芸術作品には、本物の姿からは遠い描写でも、それを人々に真実だと思いこませてしまう力が秘められている――その実例を見ていきます。
◆マネキンは、いかにして画家の欲望の対象となったのか?
画家が人間の身体を描くとき、生身のモデルを使えば長時間の拘束と報酬の支払いが必要になります。それを避けるため、モデル代わりとなる人形やマネキンが使われてきました。しかしマネキンの役割は時代とともに変わり、やがて驚くべき対象へと変貌します。世紀末ウィーンの退廃的な時代背景も視野に入れつつ、画家とマネキンの危ない関係を検証します。
◆岸田劉生は人物画の「瞳に映る窓」の描写をどうやって学んだか?
日本の近代洋画を発展させた岸田劉生の人物画は、その写実的な描写で知られています。特に、作品の瞳に映り込む窓の光を描き込んだリアルな表現は、それまで日本の画家が知りえなかった技法でした。生涯ヨーロッパへ行くことなく、実物の名画に触れる機会もなかった劉生は、いったいどこでこの写実的描写の極意を習得したのでしょうか?
本書の構成
発見される「古代」──新古典主義の誕生
第1回 ヴィンケルマンと古代の「理想的身体」
イメージはどう伝播するのか?
第2回 「本物らしい」版画の流布
第3回 手本としての複製写真
第4回 複製写真が放つ「アウラ」
西洋美術の革新と退廃
第5回 近代芸術はディレッタントによって作られた
第6回 科学的態度に反発した「自然を装った自然」
第7回 中世による近代美術の革新
第8回 サイレント・パートナー
日本と西洋はどう関わってきたのか?
第9回 工業デザインに埋め込まれた「日本」
第10回 フィンランドの女性画家、「大首絵」の美人画を描く
第11回 複製版画から学び取った「瞳に映る窓」
新しい美術史の可能性とは?
第12回 アビ・ヴァールブルクと「世界美術史」の誕生
著者プロフィール
佐藤直樹(さとう・なおき)さんは、東京藝術大学美術学部教授。博士(文学)。1965年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科後期博士課程中退。ベルリン自由大学留学、国立西洋美術館主任研究員を経て、2010年より東京藝術大学。専門はドイツ/北欧美術史。
編著書に『ヴィルヘルム・ハマスホイ―沈黙の絵画』(2020年)、『東京藝大で教わる西洋美術の見かた』(2021年)、『ファンシー・ピクチャーのゆくえ 英国における「かわいい」美術の誕生と展開』(2022年)ほか。
![]() | 東京藝大で教わる西洋美術の謎とき (基礎から身につく「大人の教養」) 佐藤 直樹 (著) |
◆現代アートを楽しく読み解き、深く味わうことができる「9つの型」とは?鈴木博文(美術解説するぞー)さん『現代アートがよくわからないので楽しみ方を教えてください』が刊行 | 本のページ
◆日本独自の妖怪文化とアートを世界へ発信!『POP YOKAI 現代百鬼夜行』が日本先行発売 | 本のページ
◆発表から半世紀、M.B. ゴフスタイン『おさかなごはん』が新訳で復刊 | 本のページ
◆写真家・富山愛子さん〈52年間世界の旅〉写真集『地球を訪ねる』が刊行 | 本のページ