なぜ「極論」が勝ってしまうのか? ベストセラー『民主主義の死に方』著者がアメリカで起きている異常事態を描いた『少数派の横暴』が刊行
多数派よりも少数派が力を持つようになったアメリカの衝撃の実態を描き出す、スティーブン・レビツキーさん&ダニエル・ジブラットさん著『少数派の横暴 民主主義はいかにして奪われるか』(訳:濱野大道さん)が新潮社より刊行されました。
共和党のトランプ前大統領の政治手法を鋭く批判してきた二人の政治学者が、アメリカ政治の歴史や仕組みを掘り下げ、なぜ共和党がアメリカ政治の決定権を握ってしまったのか、そしてなぜ共和党の中の過激派が力を持つようになったのかを精緻に分析。
妊娠中絶禁止、銃規制反対、トランプ支持……なぜ「極論」が勝ってしまうのか?
11月5日に共和党のドナルド・トランプ前大統領と、民主党のカマラ・ハリス現副大統領が争うアメリカ大統領選が行なわれます。
アメリカは二大政党制の国であり、共和党と民主党の力は拮抗していると言われます。
ところが、大統領選の一般投票の結果を見てみると、共和党が民主党に勝ったのは1992年から2020年までの約30年間でたった1度にすぎません。それでも共和党は3度にわたって大統領を出し、12年間ホワイトハウスを牛耳りました。なぜそんなことが起きたのでしょうか。そこにアメリカの政治制度の問題があります。
民主主義の基本的な原理は多数決ですが、多くの民主主義国家においては、「多数派の横暴」を防ぎ、少数派の権利を守るために、さまざまな「反・多数決主義」的な制度が組み込まれています。
本書の著者らが指摘するのは、アメリカには「反・多数決主義」の仕組みが多すぎるということです。その結果、利益を得ているのが共和党です。1990年代以降、民主党に対してほぼ一貫して「少数派」の立場にあるにもかかわらず、選挙制度を操作し、議事妨害(フィリバスター)を乱発し、実質的にアメリカ政治の決定権を握っています。
また共和党自身も、党内の過激派に主導権を握られてしまっています。少数派が決定権を握れば、多数派の民意に反する決定が下されるようになり(たとえば妊娠中絶禁止や銃規制反対は少数派の意見です)、政治への信頼度は下がり、民主主義は壊れていきます。
多数派が主導権を握る正しい民主主義に戻すにはどうすればいいのか。米ハーバードの碩学が根本から問いかけます。
【本書の内容紹介】
妊娠中絶禁止、銃規制反対、トランプ支持……なぜ「極論」が勝ってしまうのか。
この三〇年間、民主党に対してほぼ一貫して少数派の立場にある共和党が、アメリカ政治の決定権を握ってきたのはなぜか。そして共和党はいつから過激派に牛耳られてしまったのか。米ハーバード大学の碩学が、少数派がルールを悪用して政治を支配する手口を暴き、民主主義の危機を警告する。ベストセラー『民主主義の死に方』第二弾。
本書の構成
はじめに
第1章 負ける恐怖
第2章 権威主義の陳腐さ
第3章 アメリカで起きたこと
第4章 共和党はなぜ民主主義を放棄したのか?
第5章 拘束された多数派
第6章 少数派による支配
第7章 異常値としてのアメリカ
第8章 アメリカの民主主義を民主化する
著者プロフィール
■著者:スティーブン・レビツキーさん、ダニエル・ジブラットさん
ともに米ハーバード大学政治学教授。レビツキーさんはラテンアメリカと発展途上国を対象に、ジブラットさんは19世紀から現在までのヨーロッパを対象に、民主主義の崩壊過程を研究している。
米トランプ政権誕生後に出版された共著『民主主義の死に方』が世界的ベストセラーとなる。
■訳者:濱野大道(はまの・ひろみち)さん
翻訳家。ロンドン大学・東洋アフリカ学院(SOAS)卒業、同大学院修了。訳書にレビツキー&ジブラット『民主主義の死に方』、ケイン『AI監獄ウイグル』(新潮社)、ロイド・パリー『黒い迷宮』『津波の霊たち』(早川書房)、グラッドウェル『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ』(光文社)などがある。
![]() | 少数派の横暴:民主主義はいかにして奪われるか スティーブン・レビツキー (著), ダニエル・ジブラット (著), 濱野 大道 (翻訳) |
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