伊勢神宮に祀られているのは本当に天照大神なのか? 関裕二さん『アマテラスの正体』が刊行
歴史作家・関裕二さんが日本古代史最大の謎に迫る『アマテラスの正体』が新潮新書より刊行されました。
古代史研究の鬼才、歴史作家・関裕二さんが日本古代史最大の謎に迫る!
『日本書紀』によると、第11代崇神天皇はそれまで宮中で祀っていた天照大神を宮中から出してしまいます。「神威に圧倒された」からだと『日本書紀』にありますが、なぜ、祖神であるはずの天照大神を恐れなければならなかったのか、その理由は謎に包まれたままです。
宮中から出された天照大神は、伊勢という新天地に落ち着くことになります。ただし、伊勢は都のある奈良盆地から見て親しみのある土地とは言えません。鈴鹿(伊勢国)、不破(美濃国)、愛発(越前国)という3つの関の東側にある「関東」地域で、特に神聖視されていたわけでもありません。その地になぜ皇祖神を祀るのか。やはり理由はわかりません。
明治になるまで、伊勢神宮に参拝した天皇はいたのでしょうか?
「ほとんどいない」というのが正解でしょう。桓武天皇は一度だけ伊勢に参拝していますが、それは皇太子時代。持統天皇は参拝したというのが定説ですが、『日本書紀』には「行幸」としか書かれておらず、本当に参拝したのかどうかは微妙なところです。
天照大神は皇祖神のはずなのに、それにふさわしい扱いをされているとはとても思えません。その背景には何があるのでしょうか? 本書はこの問題を様々な視点から考察します。
たとえば、宮中を出され伊勢に祀られることになった天照大神の正体は、実は大物主神ではないのか、という視点。奈良の三輪山には、崇神天皇が畏れた大物主神が祀られていました。出雲からやって来た神です。今も大物主神を祀る奈良の大物神社には「三輪と伊勢は一体分身」という伝承が残されています。
そして、もう一つの重要な視点は、天照大神とともに宮中から出された日本大国魂神という存在です。どうやら尾張に由縁を持つ神のようですが、ヤマト建国にも深くかかわっており、出雲とも浅からぬ縁がありそうです。これまであまり注目されてこなかったこの神を深く追究することで、アマテラスの真の姿が浮かび上がります。
【内容紹介】
天皇家の祖神、天照大神(アマテラス)は伊勢神宮に祀られていますが、明治天皇が参拝するまで、歴代天皇はほとんど誰も伊勢神宮を訪れていません。一体なぜなのでしょうか。実は、アマテラスはかつては宮中に祀られていたのですが、11代崇神天皇の時代、もう一柱の神と共に、そこから出されてしまいました。その神の名は日本大国魂神(やまとのおおくにたまのかみ)。これまで注目されなかったこの神に光を当てることで、アマテラスの本当の姿が浮かび上がります。
本書の構成
第一章 アマテラスと持統天皇をめぐる謎を解く
アマテラスが先か持統が先か/誰のために日本書紀は書かれたか/蘇我氏見直し論の背景/壬申の乱と皇親政治/皇太子は草壁皇子ではなく大津皇子だった?/草壁皇子が岡宮に住んだわけ/異常な回数の吉野行幸/高市皇子に冷淡な日本書紀/実は即位していた? etc.
第二章 太陽神と伊勢の地をめぐる謎を解く
なぜ王家はアマテラスを恐れたか/ヤマト建国時の日神とアマテラス/天皇はいつから現人神になったか/大物主神とスサノヲの共通点/「伊勢と三輪は一体分身」の意味/内宮の別宮が古墳時代の祭祀場/『続日本紀』が語る伊勢創祀/太陽神でつながる荒祭宮と葛城山/海に沈んだサルタヒコ/封印されたヤマトの太陽神 etc.
第三章 ヤマト建国と尾張氏をめぐる謎を解く
大国魂神という古代史の盲点/神武東征の功労者・椎根津彦/大国魂神と東海の海人の関係/日本書紀が無視する「東海」と「尾張」/ヤマトタケルに怯えた持統天皇/二つに分かれていた黎明期の王家/タラシヒコの諡号の由来と成立/ナガスネビコは尾張氏の祖か/崇神天皇と前方後円墳体制/四尺一寸ものスネを持つ王 etc.
第四章 大国魂神とアマテラスをめぐる謎を解く
大国魂神と伊勢/謎解きの鍵は「出雲の国譲り」/仲哀天皇を追い詰めた神の正体/『魏志倭人伝』に描かれた悲劇/ヤマトを二分する勢力の存在/天稚彦とアジスキタカヒコネ/葛城と尾張のつながり/なぜアマテラスと同等の尊称なのか/二度の悲劇に見舞われた東海勢力 etc.
著者プロフィール
関裕二(せき・ゆうじ)さんは、1959(昭和34)年生まれ、千葉県柏市出身。歴史作家、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。
『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼』『古代史の正体』『スサノヲの正体』など著書多数。
![]() | アマテラスの正体 (新潮新書) 関 裕二 (著) |
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