【第19回中央公論文芸賞】荻原浩さん『笑う森』が受賞

荻原浩さん著『笑う森』(装画:都築まゆ美さん)
中央公論新社は8月19日、令和6年(第19回)中央公論文芸賞の受賞作を発表しました。
第19回中央公論文芸賞が決定!
第19回中央公論文芸賞の選考会が8月19日に開催され、浅田次郎さん、鹿島茂さん、林真理子さん、村山由佳さんの選考委員4名による審査の結果、次の通り受賞作が決定しました。
<第19回中央公論文芸賞 受賞作品>
荻原浩(おぎわら・ひろし)さん
『笑う森』(新潮社)
受賞者の荻原浩さんは、1956年生まれ、埼玉県出身。成城大学経済学部卒業。広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。1997年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞、2014年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞受賞、2016年『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞。
今回の受賞作『笑う森』は荻原浩さんの2年ぶりとなる長編小説です。物語は、自殺の名所と噂の「神森」で失踪したASD児・真人が、1週間後に救助される場面から始まります。特に衰弱した様子もなく、食べ物は摂っていたはずだと診断される真人。その上、なぜか苦手だったはずのバナナが食べられるようになったり、教えた覚えのない言葉や歌をしきりに発していて……。「くまさんが助けてくれた」と語る彼に、あの森で一体何があったのか? 世間からバッシングを浴びるシングルマザーの母に代わり、真人の叔父が1週間の空白を解明するため奔走します。
真人と同じタイミングで神森に迷い込んだのは、恋人をうっかり刺殺した女、同僚や生徒からいじめを受ける中学校教師、挫折続きのユーチューバー、娘のために組の金を奪って逃走するヤクザ。拭えない過去と罪を背負った4人は、森での不思議な邂逅を機に、生まれ変わります。死体を埋めた手で寒さに震える子供にマフラーを巻き、食事を与え、それでも保身のために幼子を夜の森に置き去りにする……。懺悔に慈悲深い微笑みを向け、そっと再生に導く、荻原ワールド炸裂の一作です。

(c)新潮社
受賞作の選評は、10月15日発売の『婦人公論』11月号に掲載される予定です。贈賞式は10月17日に都内で開催。
中央公論文芸賞について
中央公論文芸賞は、中央公論新社が創業120周年を記念して、2006年に創設した文学賞です。「第一線で活躍する作家のさらなる飛躍、新たな代表作となる優れたエンターテインメント作品」を顕彰します。
前年7月から当年6月までを対象期間とし、受賞者には正賞として記念品、副賞として賞金100万円が授与されます。
![]() | 笑う森 荻原 浩 (著) 原生林で5歳のASD児が行方不明になった。1週間後無事に保護されるが「クマさんが助けてくれた」と語るのみで全容を把握できない。バッシングに遭う母のため義弟が懸命に調査し、4人の男女と一緒にいたことは判明するが空白の時間は完全に埋まらない。森での邂逅が導く未来とは。希望と再生に溢れた荻原ワールド真骨頂。 |
◆石田夏穂さん〈ボディ・メイキング〉小説『ミスター・チームリーダー』が刊行 | 本のページ
◆旬の商品に群がり稼ぐ「転売ヤー」の現場に密着! 奥窪優木さん『転売ヤー 闇の経済学』が刊行 | 本のページ
◆石田夏穂さん『ミスター・チームリーダー』刊行記念!羽田圭介さんとのトークイベントを開催 | 本のページ
◆日本農業新聞で大反響を呼んだ直木賞作家・河﨑秋子さん連載小説『森田繁子と腹八分』が書籍化 | 本のページ