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哲学者・批評家の福尾匠さん《真の現代思想》『非美学』が刊行

いま最もその動向が注目される哲学者・批評家である福尾匠さんによる『非美学――ジル・ドゥルーズの言葉と物』が河出書房新社より刊行されました。

 

『非美学――ジル・ドゥルーズの言葉と物』の威力

福尾匠さんは、初の著作『眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社)が人文書読者を中心に熱烈な支持を集め(「紀伊國屋じんぶん大賞2019」第5位)、その後の各紙誌への寄稿、文芸誌「群像」での連載「言葉と物」、哲学を売る試み「哲学の店 フィロショピー」を催すなど、常にその動向が注目を浴びる気鋭の哲学者、批評家です。

 
最新刊となる『非美学――ジル・ドゥルーズの言葉と物』は、2021年3月に提出された自身の博士論文を約3年の歳月をかけリライト、確かな手つきで磨き上げられたドゥルーズ論=批評論。福尾さんの“主著”と呼ぶにふさわしい力作です。

 
哲学を「概念の創造」として定義したドゥルーズにとって、芸術を通して概念を創造する批評とは何だったのか。ドゥルーズに伏在する「言葉と物」の二元論から、東浩紀さん、千葉雅也さんといった今世紀の日本を代表する批評家が論じてきた「否定神学批判」の可能性と限界に迫る。当代きっての俊英による、われわれの現代思想、その嚆矢がついに放たれました。

 
<「禍々しいまでの熱意」千葉雅也さんが絶賛!>

博士論文をもとにした著作に、人々の価値観を根底から揺さぶろうとする気合いを込める――今や往年のあり方となりつつあるその禍々(まがまが)しいまでの熱意を、久しぶりに読んだ。
芸術と哲学の距離。そして、ものごとの自律性を改めて肯定すること。
何もかもをクリエイティブだと言って微笑むようなこの時代に、創造性とは何かをゼロから問い直す。
――千葉雅也さん(『現代思想入門』『センスの哲学』)

 

本書の構成

序論

第1章 能力 美学批判とその挫折
1-0 前期ドゥルーズの能力論
1-1 理性、批判、超越論性
1-2 共通感覚とその発生
1-3 共通感覚批判
1-4 美学=感性論(エステティック)の統合とイメージなき思考
1-5 想像力の役割とその両義性

第2章 イメージ 『シネマ』の批評的受容論
2-0 イマジネーションからイメージへ
2-1 ベルクソンのイメージ概念――物質=イメージ=知覚
2-2 運動と思考――映画的能力論(1)
2-3 運動イメージと時間イメージ――観客の視点から
2-4 デューリングの映像論
2-5 イメージか装置か
2-6 観客かエンジニアか
2-7 イメージと概念

第3章 体系 地層概念の地質学
3-0 「地層」と後期ドゥルーズ
3-1 なぜ地層を概念にするのか
3-2 地層のエレメント
3-3 動物になる前に――-離する表現(1)
3-4 ドゥルーズとフーコーの言葉と物(1)
3-5 視聴覚的思考――映画的能力論(2)
3-6 「ましてやわれわれ自身が著者であるとき」――映画の思考と『シネマ』の思考
3-7 内在平面――哲学の構築主義(1)

第4章 言語 概念のプラグマティック
4-0 命題と言表、科学と哲学
4-1 オースティンの言語行為論――パフォーマティブから発語内行為へ
4-2 デュクロの言語行為論――法的人称性と発語内行為としての前提
4-3 指令語と間接話法――言表行為の集合的アレンジメントとは何か
4-4 指令語をパスワードに書き換える
4-5 概念――哲学の構築主義(2)
4-6 眼を逸らさなければ書けない――〈実現〉のパリノード

第5章 人称性 パフォーマティブ理性批判
5-0 二〇世紀哲学史
5-1 哲学的自我と直観
5-2 コルニベールによるイメージ論の読解
5-3 哲学的言表行為の三人称性
5-4 イメージと常識――〈持つ私〉と〈在る私〉
5-5 〈呼ぶ私〉へ
5-6 概念的人物――哲学の構築主義(3)

第6章 非美学
6-0 振り返り
6-1 ポスト構造主義と否定神学批判
6-2 東浩紀の線と面、あるいは言葉と物
6-3 非並行論――ひとは身体が何をなしうるか知らないことも知らない
6-4 ドゥルーズとフーコーの言葉と物(2)
6-5 家具としての二元論、あるいは「非意味的切断」再考
6-6 ドゥルーズとフーコーの言葉と物(3)
6-7 生存の非美学――-離する表現(2)

 

著者プロフィール

写真:金川晋吾

写真:金川晋吾

福尾匠(ふくお・たくみ)さんは、1992年生まれ。哲学者、批評家。博士(学術)。

著書に『眼がスクリーンになるとき――ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社)、『日記〈私家版〉』(私家版)、共訳書にアンヌ・ソヴァニャルグ『ドゥルーズと芸術』(月曜社)がある。これまで書いてきた様々なジャンルの文章を収めた『ひとごと――クリティカル・エッセイズ』(仮題)を河出書房新社より今秋刊行予定。

 

非美学: ジル・ドゥルーズの言葉と物
福尾 匠 (著)

非美学は、批評の条件についての哲学的思考である。
非美学は他者から〈眼を逸らす〉ことの意味を思考する試みである。

哲学を「概念の創造」として定義したドゥルーズにとって、芸術を通して概念を創造する批評とは何だったのか――
ドゥルーズに伏在する「言葉と物」の二元論から、今世紀の日本の批評を導いてきた「否定神学批判」の限界に迫る、俊英による真の現代思想がここに!

他者から〈眼を逸らす〉ことの意味は、いかにして思考可能なのか?
われわれの現代思想はここから始まる!

カバー挿画:本山ゆかり《Ghost in the Cloth(コスモス)》
装丁:須山悠里

 


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