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ノーベル文学賞受賞!ハン・ガンさん代表作『すべての、白いものたちの』、日韓小説アンソロジー『あなたのことが知りたくて』が緊急重版

(c) Paik Dahuim

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韓国の作家ハン・ガン(韓江)さんがノーベル文学賞を受賞しました。河出書房新社では、代表作『すべての、白いものたちの』、「文藝」初出の短編「京都、ファサード」を収録した日韓小説アンソロジー『あなたのことが知りたくて』の緊急重版を決定、重版は10月下旬出来予定です。

 

10月10日にスウェーデン・アカデミーが発表、アジアの女性として初めてノーベル文学賞受賞の快挙

10月10日午後8時過ぎ、2024年度のノーベル文学賞が発表され、韓国の作家ハン・ガン(韓江)さんが受賞しました。韓国人の同賞受賞は初となり、アジアの女性としても初めての受賞です。

河出書房新社は、ハン・ガンさんの代表作『すべての、白いものたちの』(河出文庫版および単行本版)、短編「京都、ファサード」収録の日韓小説アンソロジー『あなたのことが知りたくて――小説集 韓国・フェミニズム・日本』(河出文庫)の緊急重版を決定しました。

 
『すべての、白いものたちの』は、アジア初のブッカー国際賞を受賞した『菜食主義者』(cuonから2011年に邦訳刊行)に続き、2度目のブッカー国際賞候補となったハン・ガンさんの代表作です。

詩的に凝縮された言葉で書かれた本書は、個人の痛みのむこう側に横たわる歴史的・普遍的な痛みという、著者のテーマがストレートに表れている作品です。

また、短編「京都、ファサード」は、河出書房新社発行の季刊文芸誌「文藝」のために書き下ろされた作品です。2019年秋季号「韓国・フェミニズム・日本」特集へ寄稿の後に韓国でも出版されるという、日本のファンにとっては嬉しい異例の刊行となりました。

京都を舞台にした本作は、2022年発売の河出文庫『あなたのことが知りたくて――小説集 韓国・フェミニズム・日本』に収録されています。

 

岸本佐知子さんからお祝いコメント

ハン・ガン作品、すでにたくさん訳されていて(そのこと自体もとても素晴らしい、訳者のみなさんに深く感謝!)、どれから読んだらいいかわからない…という方には、個人的には『すべての、白いものたちの』をお勧めしたいです。 詩のように淡く美しく、それでいて強く心をゆさぶる名作です。

 

担当編集者より

ハン・ガンさんの作品を読むと、自分の心のとても深いところに触れられた思いがします。『すべての、白いものたちの』を2018年に刊行したのち、ハンさんから、日本語版の単行本について「私にとって、とても美しい版です」というメッセージをいただきました。この度の受賞を聞いて、「文藝」で書き下ろし短編「京都、ファサード」をご寄稿いただいた時にも、日本の雑誌媒体へのとても細やかな心遣いと、深く繊細な信念を感じたことを思い出しました。
この機会にぜひ、多くの方にハン・ガンさんの作品をお読みいただきたいと願っています。

 

ハン・ガン(韓江)さん プロフィール

1970年生まれ、韓国・光州出身。1994年、短編「赤い碇」でソウル新聞新春文芸より作家デビュー。

2005年『菜食主義者』で李箱文学賞を、同作で2016年にアジア語圏初のブッカー国際賞を受賞。2018年『すべての、白いものたちの』で2度目のブッカー国際賞最終候補となる。

他の著書に小説『少年が来る』『ギリシャ語の時間』『回復する人間』『別れを告げない』、エッセイ集『そっと、静かに』、詩集『引き出しに夕方をしまっておいた』など。また、「文藝」2019年秋季号に「京都、ファサード」を寄稿(その後、『あなたのことが知りたくて』に収録)。2024年、ノーベル文学賞を受賞。

 

訳者・斎藤真理子(さいとう・まりこ)さん プロフィール

1960年生まれ、新潟市出身。翻訳家。パク・ミンギュ『カステラ』で第一回日本翻訳大賞を受賞。

著書に『韓国文学の中心にあるもの』、訳書にチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』、ファン・ジョンウン『ディディの傘』など。

 

すべての、白いものたちの (河出文庫)

ハン・ガン (著), 斎藤 真理子 (翻訳)

アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。

生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。

★『すべての、白いものたちの』単行本:https://amzn.to/3BJgpEI

あなたのことが知りたくて : 小説集 韓国・フェミニズム・日本 (河出文庫)

チョ・ナムジュ (著), 松田 青子 (著), デュナ (著), 西 加奈子 (著), ハン・ガン (著), 深緑 野分 (著), イ・ラン (著), 小山田 浩子 (著), パク・ミンギュ (著), 高山 羽根子 (著), パク・ソルメ (著), 星野智幸 (著), 斎藤真理子 (翻訳), 小山内園子 (翻訳), すんみ (翻訳)

べストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョ・ナムジュによる、夫と別れたママ友同士の愛と連帯を描いた「離婚の妖精」をはじめ、人気作家12名の短編小説が勢ぞろい!
「韓国・フェミニズム・日本」というテーマの元に寄稿された、日本&韓国文学の最前線がわかる豪華アンソロジー。

【目次】
チョ・ナムジュ「離婚の妖精」小山内園子/すんみ=訳
松田青子「桑原さんの赤色」
デュナ「追憶虫」斎藤真理子=訳
西加奈子「韓国人の女の子」
ハン・ガン「京都、ファサード」斎藤真理子=訳
深緑野分「ゲンちゃんのこと」
イ・ラン「あなたの能力を見せてください」斎藤真理子=訳
小山田浩子「卵男」
パク・ミンギュ「デウス・エクス・マキナ deus ex machina」斎藤真理子=訳
高山羽根子「名前を忘れた人のこと Unknown Man」
パク・ソルメ「水泳する人」斎藤真理子=訳
星野智幸「モミチョアヨ」
(解説=倉本さおり)

<河出書房新社以外の邦訳書>

ギリシャ語の時間 (韓国文学のオクリモノ)
ハン・ガン (著), 斎藤真理子 (翻訳)

ある日突然言葉を話せなくなった女。
すこしずつ視力を失っていく男。

女は失われた言葉を取り戻すため古典ギリシャ語を習い始める。
ギリシャ語講師の男は彼女の ”沈黙” に関心をよせていく。
ふたりの出会いと対話を通じて、人間が失った本質とは何かを問いかける。

★『菜食主義者』でアジア人作家として初めて英国のブッカー国際賞を受賞したハン・ガンの長編小説

★「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」――ハン・ガン

別れを告げない (エクス・リブリス)
ハン・ガン (著), 斎藤真理子 (翻訳)

国際ブッカー賞受賞作家、待望の最新長篇
韓国で発売後1か月で10万部突破のベストセラー!
韓国人として初のメディシス賞受賞作

作家のキョンハは、虐殺に関する小説を執筆中に、何かを暗示するような悪夢を見るようになる。ドキュメンタリー映画作家だった友人のインソンに相談し、短編映画の制作を約束した。
済州島出身のインソンは10代の頃、毎晩悪夢にうなされる母の姿に憎しみを募らせたが、済州島4・3事件を生き延びた事実を母から聞き、憎しみは消えていった。後にインソンは島を出て働くが、認知症が進む母の介護のため島に戻り、看病の末に看取った。キョンハと映画制作の約束をしたのは葬儀の時だ。それから4年が過ぎても制作は進まず、私生活では家族や職を失い、遺書も書いていたキョンハのもとへ、インソンから「すぐ来て」とメールが届く。病院で激痛に耐えて治療を受けていたインソンはキョンハに、済州島の家に行って鳥を助けてと頼む。大雪の中、辿りついた家に幻のように現れたインソン。キョンハは彼女が4年間ここで何をしていたかを知る。インソンの母が命ある限り追い求めた真実への情熱も……
いま生きる力を取り戻そうとする女性同士が、歴史に埋もれた人々の激烈な記憶と痛みを受け止め、未来へつなぐ再生の物語。フランスのメディシス賞、エミール・ギメ アジア文学賞受賞作。

回復する人間 (エクス・リブリス)
ハン・ガン (著), 斎藤 真理子 (翻訳)

朝日新聞4/30「折々のうた」で紹介「明るくなる前に」所収
李箱文学賞、マン・ブッカー国際賞受賞作家による珠玉の短篇集
痛みがあってこそ回復がある

大切な人の死や自らの病、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、ふたたび静かに歩みだす姿を描く。

『菜食主義者』でアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞し、『すべての、白いものたちの』も同賞の最終候補になった韓国の作家ハン・ガン。本書は、作家が32歳から42歳という脂の乗った時期に発表された7篇を収録した、日本では初の短篇集。

「明るくなる前に」:かつて職場の先輩だったウニ姉さんは弟の死をきっかけに放浪の人になる。そんな彼女を案じていた私に3年前、思わぬ病が見つかる。1年ぶりに再会した彼女が、インドで見たというある光景を話してくれたとき、小説家の私の心は揺さぶられる――ウニ姉さんみたいな女性を書きたい、と。

「回復する人間」:あなたの左右の踝の骨の下には穴があいている。お灸で負った火傷が細菌感染を起こしたのだ。そもそもの発端は姉の葬儀で足をくじいたことだった。ずっと疎遠だった姉は1週間前に死んだ。あなたは自分に問いかける。どこで何を間違えたんだろう。2人のうちどちらが冷たい人間だったのか。

大切な人の死や自らの病気、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、再び静かに歩み出す姿を描く。現代韓国屈指の作家による、魂を震わす7つの物語。

そっと 静かに (新しい韓国の文学 18)
ハン・ガン (著), 古川 綾子 (著)

「歌は翼を広げて、私たちの生の上へと滑り出す。歌がなくて、その翼で生の上へと滑空する瞬間すらもなかったら、私たちの苦しみはどれほど重さを増すだろうか」――本文より
ハン・ガンが「書きたいのに、書けなかった」と回想する時期に生まれた本書には、音楽との出会い、さまざまな思い出にまつわる歌、著者自身がつくった歌について綴られている。著者の繊細な感性に触れるエッセイ集の初邦訳。
巻末にはオリジナルアルバムの音源情報も収録!

 
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