2018年ノーベル文学賞発表を中止に追い込んだ渾身のルポ『ノーベル文学賞が消えた日』が刊行 スウェーデンのフェミニズムの実情、次々と暴かれていく選考組織内の権力闘争……スウェーデン最大級の#MeToo運動の内幕が、いま明らかに!

マティルダ・ヴォス・グスタヴソンさん著『ノーベル文学賞が消えた日――スウェーデンの#MeToo運動、女性たちの闘い』(訳:羽根由さん)
2018年のノーベル文学賞発表を中止に追い込んだ渾身のルポ、マティルダ・ヴォス・グスタヴソンさん著『ノーベル文学賞が消えた日――スウェーデンの#MeToo運動、女性たちの闘い』(訳:羽根由さん)が、平凡社より刊行されました。
すべては、ある「告発」から始まった
2018年5月、ひとつのニュースが世界中を駆けめぐりました。今年のノーベル文学賞は発表中止──。
きっかけとなったのは、ひとりの女性記者によるスクープ記事でした。2017年末、スウェーデン最大の日刊紙「ダーゲンス・ニューヘーテル」は、ノーベル文学賞の選考組織であるスウェーデン・アカデミーに近い《文化人》ことジャン=クロード・アルノーが、数々の性暴力を行っていたというスキャンダルを報道。アルノーの妻で詩人のカタリーナ・フロステンソンはスウェーデン・アカデミーの会員で、夫妻が経営するクラブ《フォーラム》はアカデミーの援助を受けていました。
《フォーラム》では数々のレクチャーやコンサート、展覧会が行われ、文学・芸術界で影響力を得たアルノーは、セクハラからデート・レイプまで犯していました。本書の著者はアルノーの被害者を探して取材を重ね、スクープ記事を準備、公開された内容は国内外で大反響を巻き起こします。
守旧派と改革派の対立、苦闘と挫折――女性たちのもうひとつの戦い
本書後半では、著者が記事を発表した後のスウェーデン・アカデミーの内紛も描かれています。
「アルノーとフロステンソンを擁護する守旧派」と「彼らと縁を切りたい改革派」が対立して紛糾した結果、スウェーデン・アカデミーを辞任する会員が続出。規定の人数を満たすことができなくなったアカデミーは、2018年のノーベル文学賞の発表を中止しました。
この対立は、若い女性事務局長サラ・ダニウスの苦闘と挫折という、本書のもうひとつの「女性たちの闘い」をあぶり出します。
スウェーデンのフェミニズムの実情、次々と暴かれていく組織内の権力闘争。スウェーデン最大級の#MeToo運動の内幕が、いま明らかになります。
<ジャーナリスト伊藤詩織さん推薦!>
「自分の立場を熟知して人の尊厳を踏み躙(にじ)る人間がいる。一方で自分の立場を危険に晒しても声を上げる人間もいる。#MeTooは声を上げた人々と調査報道の賜物だ」
著者プロフィール
■著者:マティルダ・ヴォス・グスタヴソン(Matilda Voss Gustavsson)さん

PHOTO by Thron Ullberg
ジャーナリスト。1987年生まれ。スウェーデン最大の日刊紙ダーゲンス・ニューヘーテルの文化部記者。
2017年11月、国内外での#MeToo 運動の高まりから、本書のもととなったスウェーデンの文壇における性暴力を告発する記事を執筆。このスクープにより、2018年11月にスウェーデン・ジャーナリズム大賞のスクープ賞を受賞。2020年2月には、優れた文化記者に与えられるエクスプレッセン紙のビヨーン・ニルソン賞にも選ばれている。
■訳者:羽根由(はね・ゆかり)さん
翻訳家。大阪市立大学法学部卒業。スウェーデン・ルンド大学法学部修士課程修了。スウェーデン在住。
訳書に『グレタ たったひとりのストライキ』(海と月社)、『マインクラフト 革命的ゲームの真実』(KADOKAWA)、共訳書に『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる』(誠文堂新光社)、『ミレニアム4』『熊と踊れ』(早川書房)、『海馬を求めて潜水を』(みすず書房)などがある。
ノーベル文学賞が消えた日: スウェーデンの#MeToo運動、女性たちの闘い マティルダ・ヴォス・グスタヴソン (著), 羽根 由 (翻訳) |
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