高橋悠治さん×坂本龍一さん幻の対談本『長電話』が復刊
高橋悠治さんと坂本龍一さんによる幻の対談本『長電話』がバリューブックス・パブリッシングより復刊しました。
『長電話』について
「遠い島の宿の離れた部屋に閉じ込められて、声だけが聞こえてくる。
こんな本はもう作れないし、話す相手ももういない。」
――高橋悠治さん
『長電話』は、1984年に坂本龍一さん主宰の出版社「本本堂」から最初に出版された、作曲家・ピアニストの高橋悠治さんと坂本龍一さんの対話を収録した一冊です。
長電話で語られる内容は音楽や芸術の枠を超え、多岐に渡り、二人の軽妙な会話から飛び出す言葉の数々は大きな示唆に富むものでした。事実、この本は“長電話“という手法も含め、多くのアーティストに影響を与えることとなり、絶版である今では幻の名著と呼ばれるに至っています。
[対話の話題] *一部抜粋
長電話、大好き/手紙と電話/イタヅラ電話/ “電話声” /顔は見たくない/電話というメディア/ウォークマン/スリー・コード/ジェイムズ・ブラッド・ウルマー/ブルース/ロックンロール/黒人の音楽・白人の音楽/プレスリー/過激なパーティ/パンク坊や/カンヌで/赤信号の渡り方/日本のビアホールで/コンピュータ料理/YMOの散開/ソロ活動/休養活動/ヴィジュアルなコンサート/パフォーマンス/目立ちたがり/見守られる不快/ピアノがなかった/シンセサイザーとピアノ/『アヴェクピアノ』の譜面/コピー/楽器の音/ピアノをやめようと思った/新しさと古い自分/なんか違う生き方/『テクノデリック』/線の時間・輪の時間/夢の時/メカスの「日記映画」/違う見方・違う生き方/現代音楽・コンピュータ・未来/時代のファッション/小説家の時間/自由ということ/西洋人の不器用/ドラッグ/健康な音楽/水牛楽団/ささやかな音楽・骨太な音楽/お客の熱い期待/乗りたくない/いい気分/気持ち悪い/聞かれること/演技と作曲/お客を選ぶ/作曲とアレンジ/批評すること/書くことの失敗/言葉の不自由/昭和軽薄体/真面目・不真面目/歌い始め/歌と声/歌と言葉/コラージュ的録音技術/ディジタルなリズム感アナログ音楽のディジタル写像/コンピュータの音楽/ランダムネスのコントロール/社会の経済的余裕/都合のいい考え/詮索好き/一人ザル/主義主張/武道館で音楽が成立する時代/カラワンにカラワンの歌を返す//連帯ということ/割り切れないこと/表現と主義主張/運動/正義は勝つか/終末論/如月小春/埋め尽くされてる物への反感/ラロトンガで/したたかさ/高橋悠治/そろわないための工夫/自閉症の気分/サイン/そういう仕事/作曲にかける時間/国家か企業か/CM表現/アメリカの桁/仕事の断り方/お金の話
『長電話』復刊によせてのレビューコメント
◆朝吹真理子さん(小説家)
本をひらくと、ふたりがいましゃべりはじめたようにきこえてくる。言葉は、読むひとがいるかぎり、新鮮に、何度も生まれなおす。
電話での会話は、文字になることはないから、切った後、おしゃべりした体感だけ残るものなのに、通話が文字で残ってしまった。約40年前の通話記録だけれど、いまとなにが違うのだろうと思って怖くもなる。
時間は、昨日今日明日へと一本の線でつづいているようにふるまっているだけで、現在(いま)はあらゆる時間とつながって同時に流れている。その感覚を読みながら思いだしていた。
◆TaiTanさん(ラッパー)
言葉が遅くて安心する。これだけ博識同士の会話なのだから、さっさと結論を急げばいいのに、ふたりはそうしない。あくまでも会話のための会話を楽しむように、意味よりもリズムを、情報よりも冗談を、断定よりも可能性を、常に優先する。どんなに議論が深まって核心へ迫っても、どちらかが必ず筋を逸らして、「フフフッフ」とか笑いながら別の話題へと逃げてしまうのだ。無論、その度に、読者は宙吊りになる。だけれども、なぜだろう。そうしたやりとりの応酬が、現代を生きる私には羨ましい。ふたりは普通に会話をしているだけだろうに、たったそれだけのことが充分に羨ましい。総じて、言葉が論破だとか動員だとかの道具に成り果てた時代の処方箋として読んだ。今、復刊されることに価値がある。
◆若林恵さん(編集者・黒鳥社)
長文レビュー「『長電話』の復刊によせて:ラディカルな編集のスタイルズ」:https://www.sakamoto-library.com/nagadenwa/wakabayashikei/
長電話 高橋悠治 (著), 坂本龍一 (著) |
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