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東大の卒業式で語られたあの「名言」の真実とは!?『東京大学の式辞 歴代総長の贈る言葉』が刊行

毎年大きな注目を集める東京大学の入学式・卒業式に読まれた式辞を元東大副学長の石井洋二郎さんが徹底解剖する『東京大学の式辞 歴代総長の贈る言葉』が新潮社より刊行されました。

東京大学の元教養学部長として、2015年の学位伝達式の式辞では、大河内一男総長の名言とされる「肥った豚よりも痩せたソクラテス」にまつわる3つの誤りを指摘し、情報社会における一次資料の重要性を説いたことで大きな話題を巻き起こした石井洋二郎さん(現東大名誉教授)。大学創立から現代まで語られた「言葉」をひとつずつ丁寧にたどります。

 

東大では一体何が語られ、何が語られなかったのか?

近年、東京大学の式辞はひと際注目を浴びています。2015年に著者の石井洋二郎さんが教養学部の学位伝達式で読んだ式辞は、ネットを通じて瞬く間に拡散され大きな話題になりました。

元来、式辞というのは大学の入学式・卒業式という「閉ざされた場所」で話す言葉ですから、社会的に大きな反響があったことに著者自身、非常に驚いたそうです。この式辞は様々なメディアで取り上げられ、8年経った現在でも卒業式シーズンにはネット記事が出回っています。

 
東大の式辞についてはいくつか有名な逸話もあり、特に有名なところでは著者自身が引用した大河内一男総長の名言「肥った豚よりも痩せたソクラテス」、蓮實重彦総長の計47分間にわたるスピーチなど、今なお語り継がれる言葉も多く存在します。また2019年の上野千鶴子さん、昨年の河瀨直美さんの祝辞などは覚えている方も多いのではないでしょうか。

 
本書では、明治・大正から現代に至るまでの式辞を日本近現代史の歩みと重ね合わせながら読み解きます。大震災、戦争、大学紛争、国際化――歴代の総長たちは時代の荒波の中で、何を語り、そして何を語らなかったのか。知られざる名演説はもちろん、ツッコミどころ満載の失言まで、時代を超えてなお生き続ける「言葉」の重みを実感させられます。

 
本書『東京大学の式辞 歴代の総長の贈る言葉』はスピーチ集であり、日本近現代史をたどる歴史書であり、そしてこれからの未来を生きる若者たちへの祝福と教訓が詰まった「手紙」でもあります。心揺さぶられる言葉の数々は、きっと読者のこれからの人生の糧になるはずです。

 
<内容紹介>

明治十年の創立から東京大学は常に学問の中心としてあり続けた。大震災、戦争、大学紛争、国際化――その歩みはまさに日本の近現代史と重なり合う。時代の荒波の中で、歴代の総長たちは何を語ってきたのか。「名式辞」をめぐる伝説に、ツッコミどころ満載の失言、時を超えて紡がれる「言葉」をひとつずつ紐解く。南原?から矢内原忠雄、蓮實重彦まで、知の巨人たちが贈る、未来を生きる若者たちへの祝福と教訓!

 

本書の構成

はじめに

第1章 富強の思想、愛国の言葉(1877‐1938)
明治維新後、ほどなく創設された東京大学。国力を高め、欧米列強に伍するために学問が果たすべき使命とは――日清・日露をはじめ「戦争の時代」を目前に語られたこと。

第2章 戦争の荒波に揉まれて(1938‐1945)
一身を君国に捧ぐるの覚悟を――皇国史観に揺れる学問の府と、命を散らす学徒。日中戦争勃発から太平洋戦争、そして敗戦まで。色濃く映し出された、あの時代の空気とは。

第3章 国家主義から民主主義へ(1945‐1951)
新憲法がもたらした戦後民主主義。女子学生の入学、新制大学への移行など大学のあり方が一新される一方で、講和をめぐり南原総長の理想と政治権力という現実が衝突する。

第4章 平和と自由のために尽くす人となれ(1951‐1957)
講和によって日本は自主独立を取り戻し、大学は「国策大学」から「国立大学」へと姿をあらためる。平和主義、学問の自由、そして大学の自治を問い直す矢内原総長の信念。

第5章 肥った豚よりも痩せたソクラテス?(1957‐1968)
東大籠城事件やデモ隊の国会突入など六〇年安保闘争の騒乱の中、大学教育の真価が問われる。長く語り伝えられてきた大河内総長の「名式辞」の真実とは。

第6章 ノブレス・オブリージュ、国際人、多様性(1969‐1985)
「高き身分の者に伴う義務」を負い、「よくできる人」より「よくできた人」に――学生紛争が終わり、大学自体が大衆化していく転換期、求められる人材像にも変化が起きる。

第7章 あらゆる学問分野の連携を(1985‐1993)
バブルの狂躁、冷戦終結など国内外とも情勢は大きく変わる。気候変動をはじめ人類規模の問題と学問はどう向き合うか。突っ込みどころ満載の言葉から次代への正論まで。

第8章 未来へ伝達すべきもの(1993‐2001)
東大の式辞は、矛盾と葛藤に満ちた日本の近現代史と見事に重なりあう。阪神・淡路大震災を経て、二十世紀の終わりに二人の総長が贈った未来への「祝福」とは――。

補章 いま君たちはどう生きるか(来賓の祝辞から)
独創力、人間力、想像力、ノブレス……安藤忠雄、ロバート・キャンベル、上野千鶴子ら近年話題になった三氏の祝辞が示した、若者たちへの熱いメッセージ。

あとがき

 

著者プロフィール

著者の石井洋二郎(いしい・ようじろう)さんは、1951(昭和26)年生まれ、東京都出身。専門はフランス文学・思想。東京大学教養学部長、副学長などを務め、現在中部大学特任教授、東京大学名誉教授。

『ロートレアモン 越境と創造』など著書多数。2015年に教養学部の学位伝達式で読んだ式辞が大きな話題になった。

 

東京大学の式辞 (新潮新書)
石井 洋二郎 (著)

 


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