本のページ

SINCE 1991

世界17ヵ国で出版決定!6人の側近が語るウクライナ大統領の評伝『ゼレンスキーの素顔』邦訳版が刊行

セルヒー・ルデンコさん著『ゼレンスキーの素顔――真の英雄か、危険なポピュリストか』(訳:安藤清香さん)

セルヒー・ルデンコさん著『ゼレンスキーの素顔――真の英雄か、危険なポピュリストか』(訳:安藤清香さん)

セルヒー・ルデンコさん著『ゼレンスキーの素顔――真の英雄か、危険なポピュリストか』(訳:安藤清香さん)がPHP研究所より刊行されました。

2019年までは軍務はおろか、政治経験すらなかったゼレンスキー大統領が、ロシア侵攻後、突如として世界中の注目を集めますが、その過去や人物像はあまり知られていません。ウクライナを代表する評論家でジャーナリストのセルヒー・ルデンコさんは、ゼレンスキー大統領の側近6人を徹底取材します。豊富なエピソードから、政治家として、指導者として、そして人間としてのゼレンスキー大統領とは、どんな人物なのかに迫ります。

 

ゼレンスキー大統領の唯一の評伝

本作『ゼレンスキーの素顔』の原著は、元々2021年はじめに本国で出版され、幼少期から第6代ウクライナ大統領になるまでがまとめられたものです。2022年のロシア侵攻を受け、無名の国家元首が戦時下の大統領になっていく様子を加筆し、改訂版は世界17カ国で出版が決定しています。

 
著者のセルヒー・ルデンコさんは、ウクライナ元大統領や政治家についての評伝で数々の賞を受賞したジャーナリストです。本書では、ウクライナの内政を切り口にゼレンスキー像に迫ります。なお、日本語訳出版にあたっては、ウクライナ人の国際政治学者であるアンドリー・グレンコさんが解説文を寄せています。

 

6人の側近が語る36のエピソード

著者は、ゼレンスキー大統領の6人の側近に徹底取材を行ない、36のエピソードを紹介します。

1)ルスラン・リャボシャプカ:ゼレンスキー政権下、最初の検事総長
2)ロマン・ベスメルトニー:ドンバスに関する3者間交渉で大統領の代理人を務める
3)アンドリー・ボフダン:ゼレンスキーの政界入りを支えた政治顧問
4)ヴィクトル・ボビレンコ:ゼレンスキーが大統領になると予言した政治顧問
5)ヘオ・レロス:ウクライナ議会の副議長であり、ゼレンスキーの元同僚
6)コンスタンチン・ボンダレンコ:政治顧問

 
本書には、説教じみた話や偏見、情報操作などは含まれていない。事実だけだ。私はただ、第6代ウクライナ大統領の素顔の肖像画を描きたかったのだ。その出来栄えは、読者の皆さんにご判断いただこう。
――セルヒー・ルデンコ
(本文より)

 

「訳者あとがき」より

ウクライナ人には、歴史的に西欧に後れを取ってきたという思いが根強く残っており、常に西欧と自国を比較する傾向がある。そうした西欧に対する憧れと劣等感は、本書でも、例えばフランスのエマニュエル・マクロン大統領や英国のボリス・ジョンソン首相とのエピソードの中に如実に表れている。そこには必ずロシアのウラジーミル・プーチン大統領が脇役として登場し、ウクライナの大統領はロシアの大統領とではなく、フランスや英国の首脳と対等な関係にあるのだと、著者は強調する。果たしてそうだろうか? 十七世紀末にロシアのピョートル大帝が始めた一連の西欧化改革は言うに及ばず、現代に至るまで日本でも広く親しまれているロシア文学の随所にも表れているように、西欧に対するコンプレックスはロシア人も伝統的に抱き続けてきた。こうしたロシアとの類似性に対するウクライナ人のいら立ちこそが、「脱亜入欧」ならぬ「脱露入欧」の流れに拍車を掛けているのだろう。

 
だが、ウクライナとロシアの共通点は、西欧に対する劣等感という負の部分だけではない。両国はともに、九世紀後半から繁栄したキーウ公国を起源とする姉妹国家だ。異なる背景を持つ、遠い西欧諸国の中に自国との共通点を探し出そうとするよりは、同じ起源を持つ国同士の拠り所を見つける方がはるかに容易であるはずだ。では、ウクライナ人とロシア人は何が違うのだろうか? 訳者の私は、二〇一二~一四年に在ロシア日本国大使館に赴任し、二〇一九年のゼレンスキーの大統領就任時を含む二〇一八~二〇年に在ウクライナ日本国大使館に勤務した。両国に実際に住んで最初に発見したことは、ウクライナ人の反骨精神だ。十三世紀にキーウ公国がモンゴル帝国に滅ぼされて以降、一九九一年にソ連から独立するまで、ウクライナ人は主に周辺のポーランドやロシアに支配され、独立した国家を持たなかった。そうした背景の中、支配者に対してたびたび反旗を翻してきたのがウクライナの武装騎馬集団のコサックである。「自由の民」であるコサックは、残念ながら組織力や統率力に欠け、ウクライナ人を一つにまとめることができず独立を勝ち取ることはなかったが、権力に抵抗する反逆の精神は今もウクライナ人の中に生きている。私がキーウに赴任していた期間でも、ありとあらゆる理由で市民が頻繁に抗議運動を行っていた。これは、モスクワでは見られなかった光景である。イワン雷帝やピョートル大帝、そして現在のプーチン大統領に至るまで、国家の秩序を守るために絶対的な権力者を求めてきたロシア人とは明らかに異なる精神性を、ウクライナ人は持っている。

 

著者プロフィール

 
■著者:セルヒー・ルデンコ(Sergii Rudenko)さん

ウクライナの時事評論家、テレビジャーナリストで、独『ドイチェ・ヴェレ』で毎週著者コラムを執筆し、インターネットテレビ局「エスプレッソ」の編集長を務めている。「ラジオリバティー」のウクライナ・サービスに勤務していた。

ヴィクトル・ユシチェンコ、ユリヤ、ティモシェンコ、ヴィクトル・ヤヌコヴィチの側近に関する書籍は、雑誌『コレスポンデント』が選ぶ最高の本トップ20に選ばれた。2009年には著書『ユリヤ・ティモシェンコの政府(仮邦題)』が雑誌『コレスポンデント』が選ぶ最高の本の1冊に選出された(ジャーナリズム部門第3位)。
2012年にパブリックドメインで公開された著書『ヤヌコペディア(仮邦題)』は、15万4000人の読者を獲得する。本書『ゼレンスキーの素顔』は、世界17カ国で出版が予定されている。

 
■訳者:安藤清香(あんどう・さやか)さん

東京外国語大学外国語学部ロシア東欧過程ロシア語専攻卒業、英国プリストル大学大学院政治学研究科修了。国際関係論修士。

外務省専門調査員として、在ロシア日本国大使館経済部、在ウクライナ日本国大使館経済班に勤務。

 

ゼレンスキーの素顔 真の英雄か、危険なポピュリストか
セルヒー・ルデンコ (著), 安藤 清香 (翻訳), アンドリー・グレンコ (解説)

ウクライナで発売された唯一無二の評伝。世界17ヵ国で発売が決定!

技術者の父親らとともに、モンゴル北部の町で幼少期を過ごしたゼレンスキー。大学では、即興コメディコンテストの番組『KVN』に出場する友人や将来の伴侶オレナとの出会いと恋、そして制作会社「第九五街区」でドラマ制作へと邁進する日々。
主人公を務めたドラマ『国民の僕』が社会現象となり、同名の政党をつくり、大統領選挙で泡沫候補から主役の座に躍り出たゼレンスキーが、大統領の椅子にたどり着いた先に見たものとは?

汚職撤廃を掲げながら、身内で政府の重要ポストが固められ、数多くの問題を抱えることになったゼレンスキー。しかし、ロシアのウクライナ侵攻とともに、その評価は一変していく。ウクライナの政治の混迷状況がわかってこそ、ロシアのウクライナ侵攻の過程、ゼレンスキーの生き方が理解できる。

著者はウクライナで著名な政治ジャーナリストであり、ゼレンスキー大統領の素顔を、ゼレンスキー自身、妻オレナの言葉、古くからの友人や仕事仲間、側近らのさまざまなインタビューをもとに活写していく。

「本書に収められた第六代ウクライナ大統領の生涯のエピソードの一つひとつが、ウォロディミル・ゼレンスキーの肖像を構成する要素だ。政治経験も関連知識もないまま、ウクライナ人に国家を変えると約束した男。一三五〇万人の有権者が運命を託した男。
本書には、説教じみた話や偏見、情報操作などは含まれていない。事実だけだ。私はただ、第六代ウクライナ大統領の素顔の肖像画を描きたかったのだ」――プロローグより

全体が37のエピソードで構成されているため読みやすく、ロシアのウクライナ侵攻をより深く知るためにも格好のテキストである。
解説は『プーチン幻想』『NATOの教訓』(PHP新書)のアンドリー・グレンコ氏。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です